【EVの敵はハイブリッド?】そもそも「EV一択」疑問 HVで技術を磨き、二次電池コスト次第で本腰を

公開 : 2021.01.06 08:25  更新 : 2021.10.09 23:41

EV一択になるのは時期尚早?

EVを推したくなる気持ちはわかる。EVには、いくつもの美点があるからだ。

まず、走行中に排出するCO2がゼロ。これが大きい。さらにモーターの特性から、低回転で力強く、走行フィールが意外といい。また、エンジン車は始動後に温まるまでの間の燃費性能が悪く、ストップ&ゴーの多い短距離使用が苦手となるが、EVにはそんな問題はない。街での買い物のような使い方に向いているといえる。

日産リーフ
日産リーフ    日産

一方、欠点もある。まず、搭載する二次電池が非常に高額だ。しかも、製造時に大量のエネルギーが必要になる。ほぼクリーンルームのような環境下で、完全オートメーションで製造しなければならない。

また、完成後に品質確認のために、満充電&放電を実施しないとならない。製造時から使用時を経て廃棄時までの製品の生涯のCO2排出量を想定すると、それほどエンジン車よりも優れているわけではない。

また、充電するための電力をどう作るかという問題もある。水力や風力、太陽光といった再エネでつくった電力であればよいのだが、日本のように火力発電で作る電力では、トータルでのCO2削減とならない可能性がある。国のエネルギー政策にも関わる問題なのだ。

使い勝手という点でも現時点ではまだまだ。なんといっても充電に時間がかかる。航続距離を伸ばすために大容量電池を積めば積むほど、時間がかかる。急速充電30分では、現実のところ100km走行分ほどしか充電できないのだ。さらに家庭での充電を行うためには、戸建ての駐車場が必要となる。日本の現状では、月極駐車場や集合住宅の駐車場ではEVの充電ができない。

そうした欠点は、いつかは克服されるだろう。しかし、残念なことに、現状ではまだまだ。日産がリーフという優れたEVを約10年も前に発売しているのにもかかわらず、普及が進まないのは、そうした欠点が克服されていないからといえるだろう。

一歩ずつ着実な普及を目指すべき

EVに対する厳しい話が続いたが、EVに未来がないわけではない。カーボンフリーの未来を目指す中で、いつかはEVが主役となる日がくることだろう。

それには二次電池の進化とコストダウンが必須だ。また、使い分けも重要になるだろう。EVをエンジン車の代替としようとするから無理があるのだ。短距離利用に割り切れば、搭載する二次電池が少なくなり、車両価格も安くなり、長い充電時間も必要なくなる。平日は近場の買い物で、週末にロングドライブをするというのであれば、プラグインハイブリッド車を選べばよい。いつも長距離を走るのであればハイブリッド車だ。

トヨタ・プリウスPHV
トヨタプリウスPHV    トヨタ

そうして、少しずつEVやプラグインハイブリッド車などの電動車が増えていけば、二次電池の流通も増えて、コストダウンや進化も進む。二次電池の値段がこなれてきてから、EVやFCVにシフトすればよい。

ちなみに、経済産業省が2018年に発表した「自動車新時代戦略会議」では、2030年に次世代自動車(EVやHVなどの電動車+クリーンディーゼル)50‐70%の普及を目標としていた。しかし、2018年の時点で、すでに次世代自動車の新車販売の割合は40%を超えるところまで来ていた。

2020年11月であれば、ハイブリッドが約37%でクリーンディーゼルを加えると、43%ほどにもなる。一方、欧州では電動車が急増した2020年でも7.2%程度に留まる。日本は、EVシフトを喧伝する欧州などよりも、電動車の割合は多い。

ハイブリッド車にはモーター、インバーター、二次電池が使われており、その技術はそのままEVにも転用が可能だ。今は、焦ることなく日本の得意なハイブリッド技術を磨いておき、二次電池のコストがこなれたときにEVに本腰を入れるのが日本のとるべき道なのではないだろうか。

記事に関わった人々

  • 鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。

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