揺れる『日産自動車』の近未来(前編) モデル数を56から45に絞り込む意味【不定期連載:大谷達也のどこにも書いていない話 #6】

公開 : 2026.06.24 11:45

エンジニアと自動車専門誌編集者という経歴で膨大な取材量を持つ大谷達也による、『どこにも書いていない話』を執筆する不定期連載です。第6回は、経営再建で揺れる日産自動車の近未来がテーマ。その前編です。

全体のモデル数を従来の56から45に絞り込み

先日、日産自動車(以下日産)が神奈川県横浜市のグローバル本社と同厚木市のテクニカルセンターで実施した『長期ビジョン説明会』は、今後の同社の発展を期待させるに十分な内容だった。

その最大の見どころは、今後の商品ポートフォリオに関する発表にあった。

日産は全体のモデル数を56から45に絞り込む。写真は次期スカイラインのティザー。
日産は全体のモデル数を56から45に絞り込む。写真は次期スカイラインのティザー。    日産自動車

日産全体のモデル数を従来の56から45に『絞り込む』といえば聞こえはよくないが、削減される予定のモデルは収益性の低いものばかりで、あくまでも自動車ビジネスの高収益化が目的と説明されれば納得しやすい。そして、それ以上に注目すべきは、絞り込んだ45車種の商品性をこれまで以上に高めようとした点にある。

中でも本説明会の場で発表された新型『エクストレイル/ローグ』や『ジューク』は、日産に新時代が訪れたことを象徴するデザインが与えられていてなかなか魅力的だった。

例えばエクストレイル/ローグの場合、セレナなどに見られるデジタルVモーションをさらに進化させたフロントデザインとされているが、それ以上に印象的なのがボディサイドで、とりわけ前後ホイールアーチ周辺を多角形で縁取ることによってオーバーフェンダー的な効果を生み出す、新鮮なアプローチが採用されている。

多角形の平面を組み合わせて構成したデザインは極めて斬新

この発想をさらに押し進めたのが、ジュークのスタイリングといっていいだろう。

ボディに曲面を使わず、多角形の平面を組み合わせて構成したデザインは極めて斬新。これはコンピューターグラフィックスの世界で『ポリゴン』と呼ばれる処理をそのままボディパネルに応用したものだが、このデザインが誕生した経緯を、チーフデザイナーのアルフォンソ・アルベイザはおおよそ次のように説明した。

多角形の平面を組み合わせたデザインを採用する、新型『ジューク』のコンセプト。
多角形の平面を組み合わせたデザインを採用する、新型『ジューク』のコンセプト。    日産自動車

「デザイナーからのプレゼンテーションで、粗いポリゴンの状態のスタイリングを見せてもらいました。担当したデザイナーは『これから表面を滑らかに仕上げます』と言っていましたが、私が『いや、このままのほうが面白い』と伝えて、このデザインが出来上がりました」

現状ではまだプロトタイプだが、どうやらほぼこのままの形で生産される模様。それも特別な材料や加工方法を用いる必要はないというので、価格が跳ね上がることもなさそう。こんな自由な発想のスタイリングが出てくること自体、日産のデザイン部門が活気に溢れている証拠と言えそうだ。

エクステラと次期スカイラインをティーザー公開

今回の長期ビジョン説明会では、このほかにも『エクステラ』と次期『スカイライン』をティーザー公開した。

エクステラは米国市場を主眼に置いたモデルで、フレーム構造を採用するというのでSUVかピックアップトラックかのどちらかだろう。現状では、ボンネット上の直線的で深い窪み、フロントグリル部分に設けられた3つの扁平大型ライト、バンパーにエンボス加工された『NISSAN』の力強いロゴが確認できるのみだが、これだけでもオフロード走行を得意とする強靱なモデルであることは容易に想像がつく。

米国市場を主眼に置いたモデル、『エクステラ』のティザー画像。
米国市場を主眼に置いたモデル、『エクステラ』のティザー画像。    日産自動車

実は、長期ビジョン説明会のおよそ10日後に日産は北京モーターショーで『テラノPHEVコンセプト』を発表。ここでも直線的な形状のボンネット、3つの扁平大型ライト、NISSANの力強いロゴといったモチーフは受け継がれていたので、新しいテラノのデザインが日産の新しいSUVやピックアップトラックなどのオフロードモデルに用いられるデザイン言語となる可能性は高い。

一方、同じ北京モーターショーで発表された『アーバンSUV PHEVコンセプト』は、テラノとは打って変わって滑らかで曲線的なデザインとされた。昨年、中国で発売して好評を博している『N7』もこれとよく似た未来的デザインを採用しているので、こちらのデザイン言語は中国市場向きだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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