【ライバル比較】ヤリス・クロス/キックス/ヴェゼル 5つの視点で比べる

公開 : 2021.07.04 05:45  更新 : 2021.10.13 12:02

荷室の広さ 狙い分かれた三者三様

ラゲッジスペースをみてみよう。

純粋な容量でいうと、キックス423L、ヤリス・クロス371L(もっとも広い仕様となるデッキボード非装着2WD)。

トヨタ・ヤリス・クロスの荷室(リアシートが3分割できる)
トヨタヤリス・クロスの荷室(リアシートが3分割できる)

そしてヴェゼルは、公式な容量が公開されていないが、先代の404Lよりも若干狭いと推測される(筆者計測によると床面の前後長さは先代より35mmほど短い)。

いずれにせよ、広さでいえばキックスがリードしている。

キックスやヴェゼルで驚くのは荷室床の広さだ。床が低いから、高さで容量を稼げている。

とはいえ、荷室の評価は単純な広さだけでは語れない。

各車の特徴をみると、キックスはとにかく広さ重視でシンプルな構造。だから後席格納時には荷室床と倒した後席部分に段差が生じるが、それを解消するよりもとにかく広さという狙いがみえてくる。

一方ヤリス・クロスは、絶対的な広さではライバルに届かないが、アレンジ幅の広さが自慢。

上級タイプになるとリアシート背もたれは左右分割を超えて左右と中央が独立した「3分割」で倒せるし、荷室の床の高さを調整するデッキボードも組み込まれる。

そのデッキボードはさらに、左右分割で取り外しや高さ調整がおこなえる、高価格帯のSUVでも見たことがない凝ったつくりなのだから驚くばかりだ。

とにかくアレンジ勝負である。

ヴェゼルは両者の中間。

容量もあるし、後席格納時には畳んだシートが低く収まって荷室床がフラットになるなどアレンジの実用性も見事。

こうして比べてみると、それぞれ狙いが分かれた三者三様なのが面白い。

パワートレイン 爽快感は「キックス」圧勝

各車の狙いは、パワートレインの違いにも表れている。

潔く全車統一しているのはキックス。

日産キックス(eパワーを搭載)
日産キックス(eパワーを搭載)    日産

しかも、純粋なガソリンエンジン仕様はなく、全車ともハイブリッドとしている。駆動方式はFFのみで、4WDの設定もない。

一方でヤリス・クロスとヴェゼルはガソリン車とハイブリッドが選べ、駆動方式もFFと4WDを選択可能だ。

注目したいのは、ヴェゼルのエンジン。

ここで比べたライバルの中でヴェゼルだけが4気筒エンジンを搭載するのだ。

4気筒エンジンは、ヤリス・クロスが搭載する3気筒エンジンに比べて燃費性能で不利だが、ガソリン車で比較するとフィーリングや振動など質感の面でアドバンテージがある。

ガソリン車でパワートレインに上質さを求めるなら、ヴェゼルは魅力的だ。

ハイブリッド同士を比較すると、燃費性能に優れるのはヤリス・クロス。

しかしながら、アクセルを踏み込んだ時の爽快感は、盛り上がりと伸び感のあるキックスが圧倒的にリードしている。

その背景にあるのは、エンジニアの情熱だ。日産でハイブリッドシステム(eパワー)の味付けをまとめているエンジニア(ハイブリッドを担当する前はGT-Rのエンジンを開発していた)がこだわる、「パワートレインの気持ち良さ」を求めるチューニングが大きく効いているのである。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

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