【スパコン富岳も使用】タイヤメーカー シミュレーターで製品開発 コスト削減と環境対策に

公開 : 2021.07.06 06:05  更新 : 2021.07.07 02:41

シミュレーターを駆使してタイヤ開発を行うメーカーを紹介。物理的な試作品を使うより多くの利点があります。

スパコンの演算能力を利用

text:Jesse Crosse(ジェシ・クロス)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

高度なドライビング・シミュレーターは、クルマの開発に欠かせないものとなっており、今やエンジニアはシャシー開発の大部分を「ドライバー・イン・ザ・ループ」(DIL)シミュレーションで行うことができる。

彼らが使用しているツールは、一般的なゲーム機よりもはるかに優れており、物理的な試作品を作成する前に、サスペンションの設定やブッシュの種類などを試すことができるレベルにまで達している。

アンシブルモーション社のドライブシミュレーター
アンシブルモーション社のドライブシミュレーター

メーカーにとっては、スピードアップとコスト削減という明らかなメリットがあるだけでなく、環境面でもメリットがある。業界全体で何千kmものテスト走行を削減し、製造時に必要なエネルギーと排出ガスを削減し、試作品の廃棄物も軽減できる。

現在、タイヤメーカーも同様の道を歩んでいる。ファルケンは、スーパーコンピュータ「富岳」を使って、タイヤの経年劣化による性能低下を防ぐ「性能維持技術」の改良に着手した。

コンピュータによるシミュレーションにより、タイヤに何が起こっているかを化学的・分子的なレベルで評価し、その変化を制御することで新品同様の性能をより長く維持することができる。

最新の富岳は、毎秒44京2010兆回の計算を行うことができるという、驚異的な演算能力を誇る。一般的なデスクトップPCやノートPCに搭載されているCPUが1個なのに対し、富岳は15万8976個のCPUを搭載している。名前の由来となっているのは日本が誇る名峰、富士山だ。

富岳は竜巻の予測、津波や地震のシミュレーション、新型コロナの感染拡大防止のためにマスクが及ぼす効果の評価などに使われている。自動車業界では、燃料電池やバッテリーの開発、永久磁石式モーターに必要なレアアースの削減などに利用されている。

最新のテスト装置でリアル体験

コンチネンタルも、米ノーフォークに本社を置くアンシブルモーション社のDILシミュレーター「デルタS3」を間もなく使い始める予定だ。

S3は、実物大のキャビンで完全没入型のドライビング体験を提供する、ゲーマーにとっては夢のような装置だ。レールの上を移動し、前後方向に5m、横方向に4m進むことができる。加速や方向転換も非常に速く、車線変更操作、タイトなコーナー、ロングコーナー、さまざまな路面、気象条件などの影響をドライバーにリアルに与える。

テスト用・試作品のタイヤは意外なほど多く消費されている。
テスト用・試作品のタイヤは意外なほど多く消費されている。

テストする車両のタイプやタイヤのコンパウンド、トレッドデザイン、構造などのデータを設定することができる。S3は、2022年にドイツのハノーバー近郊にあるコンチドロームで運用を開始する予定だ。

また、コンチネンタルは、持続可能な素材をタイヤに使用することを検討しており、このシミュレーターによって、何が有効で何が無効かをバーチャルな環境で迅速に判断できるようになると期待している。しかし、富岳もデルタS3も、デジタル技術に頼りすぎているわけではない。どちらにおいても、使う人間のスキルと経験に依存しているのだ。

コンチネンタルの目標は、テスト用タイヤの製造数と消耗数を年間1万本ずつ削減することだ。

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