シボレー・カマロSS 大排気量V8がジワる 2022年でも虜になるアメリカン4シーター・スポーツカー

公開 : 2022.02.16 05:45

シボレー・カマロは、4座で選べるスポーツ・クーペ。2LターボとV8を販売していますが、濃いめの味つけがお好みなら後者。試乗して確かめましょう。

6代目は、どんなカマロ

2002年に生産終了した4代目までのカマロは、スポーツ&スペシャリティのトレンドを取り込みながら進化してきた。

その後、7年間の空白を経て復活した5代目カマロは、初代を現代的にリファインしたようなスタイルを採用。「古き良きアメリカの復興」というわけでもないだろうが、見せ方もテイストも日本車や欧州車と一線を画していた。

シボレーカマロSS(サミットホワイト)
シボレーカマロSS(サミットホワイト)    前田惠介

6代目となる現行モデルは先代のコンセプトを踏襲。遠目に見ても一目で「アメ車」と分からせるようなスタイルも健在であり、ボリュームのあるボンネット周りが、内蔵する6.2LのV8をアピール。

ただし、OHVの大排気量V8だからといって単なる懐古趣味ではない。

エンジンは現代的軽量小型設計。ミッションは10速AT。アルミ材を随所に用いた軽量高剛性の車体。試乗したSSは、最もホットなモデルらしくボンネットもアルミ製だ。マルチリンクIRSも現代のFR車らしい。

性能を追求してミドシップに生まれ変わったコルベットに代わるFRマッチョとするにはキャラが違っているが、年配ドライバーなら70年代の米国アクション系TVドラマのリメイクにも似た感慨を抱くだろうし、若年ドライバーならトレンドと違った高性能の表現が新鮮に映るだろう。

駆ってみれば思わず「日欧の高性能スポーツとは違うのだよ」と呟きたくなるのだ。

SSの味を作るのは何?

最大トルクは62.9kg-mとか、パワーウェイトレシオは3.8kg/ps未満とか記してもカマロSSのパワーの魅力は全然伝わらない。

大排気量NAにして全域に満遍なく太いトルクを配し、微小アクセル開度から行儀よく追従。10速ATは走行状況に応じた変速を行い、変速感も歯切れいい。

4本出しエグゾーストとボンネットのエア・エクストラクターがSSの証。パフォーマンスサスペンションと磁性流体減衰力制御システムを搭載する。
4本出しエグゾーストとボンネットのエア・エクストラクターがSSの証。パフォーマンスサスペンションと磁性流体減衰力制御システムを搭載する。    前田惠介

速くて従順なパワートレインなのは間違いないが、優等生面も神経質な天才のような感じもない。現代的な洗練を備えたパワーなのに、やはり印象に残るのは「豪放磊落(ごうほうらいらく)」なのだ。

全開加速させればもう落とされてしまう。

NASCARのトップカテゴリーを思わせるような排気音。ドラムが弾けるような連続音、腹に響く様な中低音が問答無用でアメリカン・マッチョの世界に引き込む。この時点で虜なのだ。

実際の加速よりも排気音が先行しているような、というと少々語弊があるのだが、“NASCARドライバーなりきり精神状態”ではそれも仕方ない。

昂揚感が凄いのだが、意外とプレッシャーは少ない。厳密に管理された機械という印象がないせいかもしれない。

あるいはだらだらとした中高速巡航中から感じた鷹揚さが、全開加速でも持続されるのが効いているのだろう。抱擁感のある加速性能とでも表したくなる。父性を感じさせるマッチョなのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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