アルファ・ロメオ・ミト・クアドリフォリオ・ヴェルデ

公開 : 2014.06.13 23:50　　更新 : 2017.05.29 18:24

■どんなクルマ?

われわれは2014年の市場を牽引するアルファ・ロメオ・ミトの展開する様々なバリエーションに試乗してきたものの、残念ながらデビュー以来、既にいくばくかの月日を経たミトがわれわれを心から満足させることはなかった。しかしながら、今回テストをしたクアドリフォリオ・ヴェルデは今までの印象を大きく覆してくれそうな予感がする。

外観上は小変更に留まっているものの、なにより大きなニュースとなるのは6速TCTトランスミッションがミトに初採用された点だ。

組み合わされる1.4ℓのマルチエア・エンジンはフェイスリフト前から変化はなく、5500rpmで170psの最高出力を発生し、その半分以下の回転数である2500rpmで25.4kg-mの最大トルクを発揮する。しかしながらシフト・チェンジに要する時間は短縮された反面、ギアボックス自体は重量を増し、静止加速ではローンチ・コントロールによるアシストが無いために、0-100km/hまでに要するタイムはわずか0.2秒しか短縮されていない。

その代わりにミトのランニング・コストは特筆に値する進化を遂げたのである。燃費は18.5km/ℓと10％の向上を実現し、更にはCO2の排出量を11％削減した結果124g/kmにまで抑えることを可能にしたのだ。これらの数値は、最新のミニ・クーパーSのAT版 (それぞれ19.2km/ℓ、122g/km) と肩を並べる。

また￡20,210(299万円)の車両価格は、新デザインのフラット・ボトム・ステアリング、改良済みのパネル・スイッチ、18インチ・ホイール、カーボンファイバー風ダッシュボード、衛星ナビゲーションを兼ね備える5インチのタッチスクリーン・インフォテインメント・システムを含む。

■どんな感じ?

つい最近テストを行ったジュリエッタ・クアドリフォリオ・ヴェルデと同様、前のモデルからの進化は殆どないが、ミトの場合はジュリエッタほど魅力を失っていない。中でも今回の変更点で目立つのは、マニュアル・ギアボックスを廃した点だ。ただし心配することなかれ、オートマティックを用いたにも関わらずクアドリフォリオとしてのスピリットを失っていない。

今までのミトと同様、今回のミトも飛びきり速いわけではないがクアドリフォリオ・ヴェルデと比べると従順で非常に活き活きとしている。しかしながら最大トルクである25.4kg-mを引き出せるのはアルファ・ロメオD.N.A.システムをダイナミック・モードにした時のみでノーマル・モードではドライバーはやきもきとしてしまうことになるだろう。

素晴らしく出来の良いフォード・フィエスタSTと比較するとデータ上ではわずか10ps程度の差しかない。ところが実際に乗ってみると、ミトの積むマルチ・エア・エンジンの高回転側での活気はフィエスタに一歩譲る。コーナリング時にフィエスタほどスピードを出すことは憚られるし、面白みに欠けるステアリングのセッティングは操舵の邪魔をする。さらにロールは大きくシャシーの柔軟性に乏しい。

だからといって敏捷性は全くスポイルされておらず、容易にタイヤのグリップを引き出し、そのおかげでリニアな感覚をもたらしてくれる。アルファ・ロメオのホット・ハッチへの思いやりを充分に注ぎ込んだサスペンションセッティングは荒れた路面の上でも信頼に足る走りを見せてくれた。

■「買い」か?

もしミトがあなたの心を突き動かす存在であるならば、より楽しい6速マニュアルとの組み合わせをお薦めする。もちろんTCTの方が便利であることは間違いない。だけれども、のろのろと動作するパドル・シフトよりもクラッチペダルを蹴る方が楽しみとしては勝ると思うのだ。

包み隠さずに言うならば、ミトは能力的に他のライバルよりも一歩足りず、更にその実力に比べて価格は高い。前モデルからの改良は極々控え目である上に、インテリアに多用されたプラスチックを見ればデビューから6年も経っていることを認めざるをえない。

現在、このクラスのトップに君臨するミニと比較してもこれといった強みは無いし、フォード・フィスタにはベンチマークそのものが劣る。その上、アルファ・ロメオにとっては不幸なことではあるが、プジョー208GTIやルノー・クリオRS、スズキ・スイフトスポーツはミトに比べて安価である上に、もっと優秀なのである。

(ニック・カケット)