ヒュンダイ・ジェネシス

公開 : 2014.06.13 23:40  更新 : 2021.03.05 21:39

■どんなクルマ?

今、あなたのポケットに£50,000(855万円)あるか、もしくは月に£600(10万円)を支払う準備があるとする。そしてあなたはお偉方用のクルマを探しているという状況だと仮定しよう。

当然のようにメルセデス・ベンツアウディジャガーBMWレクサスボルボが選択肢として浮かび、SUV勢からはランドローバーポルシェがアピールする。インフィニティなんかも加わり、近頃ではマセラティも射程圏内へと登場する。

しかしちょっとだけ待っていただきたい。近頃のエコなんてどこ吹く風。パワフルなディーゼルも、ターボ過給された小さいエンジンも必ずしも自分には必要ないんだと。この際、排ガスの値でも、フェラーリ・カリフォルニアを上回るサルーンを持つ方がとびきりダンディなはずだ、という思考をもしあなたが持つのであれば、このヒュンダイ・ジェネシスがおすすめできる。

■どんな感じ?

ヒュンダイは売上予想台数を基本的に公表しない。意味するものはすなわち売り上げ台数は決して多くないという事であるが、もしあなたがこの4990mmで3.8ℓガソリンエンジンのビッグ・サイズなヒュンダイを英国内で保有したいと考えるのであればディーラーのドアをもうしばらく待ってから叩いてみよう。

もうしばらく待ってからというのは、9月まで国内導入されないということが発表されているためだ。ヒュンダイはこのジェネシスをクラスに恥じぬようにするため、現在英国向け専用の細かな改良を行っている真っ最中なのだ。

ヒュンダイはヨーロッパ圏において莫大な台数を販売しようと躍起になっているわけでは決してないが、ジェネシスの立ち位置に関して言えば真剣である。インテリアには高いレベルのクラフトマンシップが息づき、木目、アルミやレザーが盛り込まれおり、このクルマがライバルから見下される要素はひとつもない。

レーン・デパーチャー・システムやキャビン内のCO2増加を感知して疲れを警告するシステム(車内のCO2濃度が上昇するとドライバーは眠気を催すようになる。)、バック・センサー、お馴染みのシティ・ブレーキングにヘッドアップ・ディスプレイなどはジェネシスを筆頭に、今後順次ヒュンダイのラインナップへと拡大という。

それらのテクノロジーが5m級で約4ℓの排気量を持つセダンに搭載され、今回披露されているのだ。

しかし忘れてはならないのは、ジェネシスを含めヒュンダイ全般におけるシャーシ性能上の問題だ。ジェネシスのように大型のヒュンダイ車は極東地域や米国を第一マーケットとしてデザインされており、その後ヨーロッパ方面へ適応させ進出してきたのだ。

今回に限らず、時折ヒュンダイの動きはヨーロッパでドライブするには十分に適応しきれていない点が見受けられると評されることが多い。ジェネシスの場合、サスペンションのセットアップ一つとっても、まず韓国国内向けマーケットを対象とし、その後ヨーロッパ本国向けを開発。そしてその後に来るのがわが英国なのだ。話は変わるがロータスの足回りはヨーロッパや英国での仕様に完璧なほど適している。

不運にもこのクルマは英国仕様でなく英国に届くものはまた違ったものになるのだ。左ハンドルで仕様が違うと言ってもジェネシス如何を知るには十分であっただろう。

このジェネシスのインテリアは今までに生産されたヒュンダイの中でも群を抜いて仕上がりがいい。ルーフ・ライニングは特に魅力的な柔らかさを併せ持っている。素材の良さはヨーロッパにおいて展開されるヒュンダイを凌駕しているが、価格に見合っているとは言い難い部分が見受けられる。スイッチ類の操作性はいいが、見た目や触った時の印象がどうしても “プラスチック” なのである。

スターター・ボタンはプッシュすれば素直にモーターのような印象でアイドリングを始め、アクセル・ペダルを踏み込めばハッキリ聞こえるサウンドになる。ジェネシスには3.0ℓ、3.3ℓと最大の5.0ℓが用意され流行とは真逆に全てガソリンエンジンであるが、3.8ℓはヨーロッパ向けとしてはベストな選択肢であろう。悲しいかなディーゼルという選択肢は今後も期待できないようだ。

8速オートマチックはスムーズに変速をこなすが、個人的には面白味があって好きだが、アクセルの踏み加減が少ないと積極的にシフトアップをしない傾向が見受けられる点は万人受けしないかもしれない。

前後共にマルチリンク式サスペンションにコイル・スプリングで乗り心地はスムーズであり、ダンパーは2つのモードが選択でき、どちらを選んでも安定している。低速でステアリングは軽いが、スピードが上がるにつれて意識的に重くなるように制御されている。なおロック・トゥ・ロックは2.5回転で特段優れてはいないものの、きびきびした印象だ。

比べるにはいささか抵抗があるものの、それでは同クラスのベンチマークであるBMW 5シリーズと比べてどうなのか? 走る楽しさは劣り、そのうえ高価であるが、よく言えばリラックスできる乗り味である。走っていて感じるジェネシスのフィーリングはシトロエンC6に少し似通ったものがあるかもしれない。

■「買い」か?

神に誓って買いではない。ヒュンダイはまだヨーロッパにおける導入台数を公表していない。仮に数秒間このクルマに心移りしそうになったとしても、購入する直前には考え直すこととなるであろうし、我々もBMW 535iに一票を投ずる。

しかも、何ということだろうか。ヒュンダイの価格がマセラティ並みになっているのだから驚きだ。

もっとも、これからヒュンダイの小型ラインナップには、このジェネシスで用いられた技術がフィードバックされていくことになろうが。

(マット・プライヤー)

ヒュンダイ・ジェネシス

価格 £47,000(806万円)
最高速度 240km/h
0-100km/h加速 6.5秒
燃費 8.9km/ℓ
CO2排出量 261g/km
乾燥重量 1890kg
エンジン V型6気筒3778cc
最高出力 315ps/6000rpm
最大トルク 40.5kg-m/5000rpm
ギアボックス 8速オートマティック

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