シトロエンC4カクタス・ピュアテック82

公開 : 2014.06.15 23:50  更新 : 2021.03.05 21:44

■どんなクルマ?

今年の秋にイギリスで発売予定のCセグメント・クロスオーバーであるC4カクタスに、1.2ℓ3気筒NAエンジンを組み合わせたエントリー・グレードをテストする。

このエンジンは既にプジョー208に採用されている新世代のパワー・ユニットであり、吸気側と排気側の両方に可変バルブが設けられ、可能な限りバランス・シャフトが振動を打ち消す仕組みになっている。

以前の4気筒エンジンと比べると、今回のエンジンは25%軽量で、30%の内部摩擦が抑えられている。さらにシトロエンが言うことにはCO2排出量も25%低減される。

今回テストを行ったのは82psの最高出力を発揮する自然吸気エンジンと組み合わされる車両だが、その他にもカクタスと最も相性の良い111psのターボ加給エンジンも用意される。

シトロエンC3と同じPSA(プジョー・シトロエン・グループ)が共同開発したプラットフォーム1を土台にしているので、フロントがマクファーソン・ストラット、リアがトーションビーム式のサスペンションの組み合わせとなり、駆動方式はFFのみということになる。

ピュアテック82・エンジンを積むカクタスの乾燥重量はC4よりも200kgも軽い965kgとなり、全長はC4の4329mmよりも短い4157mmであるがホイール・ベースはたったの10mmだけしか短縮されていない。

テスト車両には205/55 R16インチのホイールに低摩擦タイヤが装着されていたが、オプションで15インチを選択することも可能である。

■どんな感じ?

ライブ、フィール、シャインからなる3つのグレードが用意され、今回の車両は、フロント・シートをソファのように繋げるアーム・レストを持たない中間グレードのフィールである。

フロントのブレーキディスクには冷却通気孔がないし、リアはドラム・ブレーキとなっている点からコスト削減に尽力していることは比較的安易に伺うことができる。

これに関してシトロエンは軽い車重から考えて、今以上のブレーキ性能は必要ないと主張する。またテスト・ルートとして使用した山道でもブレーキ・パワーに不足はなかったし、目に見えてフェードしている様子もなかったのだが、今一度厳密にテストし直す必要はありそうだ。

シトロエンはこれらのネガティブな一面に対し軽量化のためだと言うのだが、われわれに言わせてみれば単なるコスト削減にしか感じ得ない。例えば、窓をワン・プッシュで自動開閉できなかったり、リア・ウインドウはポップ・アウト式であったり、後部座席を折りたたむ際の自由度が低かったりとガッカリしてしまうポイントはあるのだけど、それでも高級感があり、乗る者を居心地の良い気分にさせる事は間違いない。このクルマのキャビンが醸し出す雰囲気は、どのライバル車とも一線を画している。

マジック・ウォッシュなる面白い特徴を持つ機能もある。これはウインドウ・スクリーン・ウォッシャーのボトルを半分のサイズにして1.5kg分軽くする目的で開発されたのだが、従来のウォッシャーの代わりにワイパーの先に水を吹き出すノズルを設けることによって、同時に使用する水の量も少なくする事を可能にするのだ。

サイド・パネルを保護するために、プラスチック同士の隙間に空気を封入した構造のエアバンプもマーケティングに一役買っていることは言うまでもない。

他にもパーク・アシスト、バック・カメラ、坂道発進アシスト、アダプティブ・ヘッドライト、パノラミック・ガラス・ルーフ、リミッター付きクルーズ・コントロールなど充実した補助機能が選択できる。10月になれば、英国市場でのオプション装備の詳細についても明らかになるだろう。

3気筒の独特なサウンドはよく抑えられているな、というのが第一印象である一方、アイドリングの回転域と(タコ・メーターがないので詳細な回転数は分からないが)高回転域では明確に耳に届いてくるようになる。

5速のマニュアル・ギアボックスは精密、あるいはクイックと言うには少し躊躇するものの、その仕立ては充分に満足できる。加えて軽量な乾燥重量の恩恵を受けて発進時にもたつくことが無いので市街地での使用に不満を感じることも無さそうだ。往年のシトロエン・ファンを再び虜にすることは難しいかもしれないが16インチのタイヤと柔らかいソファのようなシートの組み合わせのおかげで乗り心地もすこぶる良い。

フロントに積む軽量なエンジンのおかげで、コーナリングの侵入も想像よりも遥かに軽く正確であった。

小径の低摩擦タイヤとの組み合わせも良好で、別の記事にあるC4カクタス e-HDI92 エアドリームのもつ動力性能よりも優れている。もちろんアクセルを踏み込んでコーナーを攻めるタイプのクルマではないのだが、だからといって高速コーナーでは落ち着きを失うこともなく、程よい重さのステアリングは故意にホイールをスピンさせながら走ったとしても簡単にかつ適切なライン取りをすることができる。スタビリティ・コントロールが介入するタイミングも早ずぎず遅すぎずと言ったちょうどいいタイミングで、仮に介入した際も安心して身を委ねることのできるマナーを披露してくれた。

高速道路を走行する際は、ルーフ・レールとミラーが風を切る音が目立つが、エンジンの音は落ち着いていてクルマ自体も安定感があり非常に扱い易い。その一方25.0km/ℓという公表値に関してはもう少し長い距離を乗った時に正確に測定してみる必要がありそうだ。

■「買い」か?

Cセグメント・ハッチ・バックの中でも20%ほどC4カクタスに要するランニング・コストは安い結果になるとシトロエンは言う。さらに携帯電話事業からヒントを得たリース制度も導入する予定だそうだ。こちらの制度は、月々の定額料金制と使用距離に応じて料金が変動する2つのプランが用意され、両プランともにガソリン代以外に掛かる費用を全てカバーする。まさに若い世代に向けた明確なアプローチとも言えるのだ。

ピュアテック82エンジンの持つ力を充分だと感じ、外向的なルックスを気に入ったとしたらこのクルマはあなたに適した1台だといえるだろう。予想では最下位グレードのカクタスは約£13,000 (193万円)くらいになるはずだから、前輪駆動のダチア・ダスター 1.6 16V 105よりも£3,500(52万円)程度高価だということになる。ただし、カクタスの内装はダチア・ダスターよりも間違いなく良い。

しかしながら、取り急ぎの購入をお考えでないならば、ピュアテック110・エンジンが組み合わされるC4カクタスか、もしくはそのターボ加給版を待つほうが賢いのかもしれない。

(フランシスコ・モタ)

シトロエンC4カクタス・ピュアテック82

価格 £13,000(225万円)
最高速度 169km/h
0-100km/h加速 12.9秒
燃費 25.0km/ℓ
CO2排出量 107g/km
乾燥重量 965kg
エンジン 直列3気筒1199cc
最高出力 82ps/5750rpm
最大トルク 12.0kg-m/2750rpm
ギアボックス 5速マニュアル

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