スーパーカー屈指の完成度 アウディR8 V10 RWDパフォーマンス NA V10の魅力

公開 : 2022.04.07 08:25

モデル末期に向けて、選択肢が絞られたR8。NA V10に後輪駆動が組み合わされた傑作を、英国編集部が評価しました。

実用性と高い能力を兼ね備えた選択肢

アウディR8 V10のようなクルマには、余命宣告が告げられている。英国の法律上は、ディーラーで新車を購入できなくなるまで8年間が残されているが、既にアウディは純EVとして次期モデルの開発を進めている。

親戚モデルに当たるランボルギーニウラカンには、V型8気筒エンジンへハイブリッドが組み合わされる予定にある。自然吸気のV型10気筒エンジンを、ミドシップ・スーパーカーで楽しめる残り時間は、長くない。

アウディR8 V10 RWDパフォーマンス(英国仕様)
アウディR8 V10 RWDパフォーマンス(英国仕様)

充分な資金があり高性能モデルを考えているなら、英国価格12万8510ポンド(約2056万円)のアウディR8 V10 RWDパフォーマンスは、現在の有力な選択肢だ。これまでで最も実用性に長け、優れた能力を兼ね備えている。

一方で数年後を見据えて、超高性能な純EVが上陸するのを待つという選択もある。シンプル化されたメカニズムが、近未来的なスタイリングで包み込まれることだろう。

興味深い選択肢ではある。しかし、ドライビングフィールがより淡白なものになることは間違いない。いまアウディのディーラーへ足を運べば、従来的な体験を味わえるスーパーカーが手に入る。航続距離の心配も当面はいらない。

傑作ユニットと名高いアウディ製のV型10気筒エンジンを、我がモノにすることができる。類まれな咆哮で、ドライバーを聴覚面でも満たしてくれる。

最高出力570psで0-100km/h加速3.7秒

今回試乗した後輪駆動版のRWDパフォーマンスは、最高出力が570psへ制限されている。四輪駆動のクワトロ・パフォーマンスに、50psだけ届かない。現在選べるR8は、この二択だ。

駆動輪がリア側へ絞られることで、0-100km/h加速はクワトロに0.6秒遅れる。それでも、3.7秒でこなせる。アクセルペダルを踏み倒せば、320km/h以上の速度域にも到達できる。

アウディR8 V10 RWDパフォーマンス(英国仕様)
アウディR8 V10 RWDパフォーマンス(英国仕様)

燃料タンクの容量は73L。満タンにして丁寧に運転すれば、空になるまで600km以上走れる。今後の高性能EVでは、なかなか実現が難しい航続距離だといえる。

確かにアウディR8のスタイリングは、若干新鮮味が薄れてしまった。TTに似ていると感じる人も、いるかも知れない。

それでも、パフォーマンスは第一級。市街地のような流れの遅い交通にも、難なく紛れることができる。乗り心地は快適で、このクラスとしては他を圧倒するほど荷室も広い。多くの主要都市にディーラーがあるから、メンテナンスにも困らない。

価格も、能力を考えれば充分に納得できるもの。標準装備は充実しており、試乗車のオプションは特別なボディ色と大径ホイールのみ。上乗せされた金額は1685ポンド(約27万円)と、これもこの手のモデルとしては良心的なものだ。

ただし、ステアリングは固定レシオで、アダプティブダンパーはなし。リミテッドスリップ・デフは、従来的な機械式となっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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