メルセデス・ベンツCLS350ブルーテック

公開 : 2014.07.05 23:30　　更新 : 2017.05.13 12:51

■どんなクルマ?

このたびCLSにアップデートが施された。

新たなエンジン(他にもC200の168psディーゼル・エンジンとCLS400の333psツイン・ターボ3.5ℓV6がある)を手にし、3ラインのディーゼル・エンジンとCLS500には9速のオートマティック・ギアボックスが選択可能になった。

トランスミッションがアップデートされたことに加えて、新たな意匠のフロント・バンパーとグリル、ステアリング・ホイールが採用され、ダッシュボードには8インチの独立カラー・ディスプレイが追加された。

もっとも注目すべくはCLSのすべてのレンジに採用される新しいマルチ・ビームLEDヘッドランプだろう。このヘッドランプは24個の独立したLEDユニット(255通りの動きをする)から構成され、フロントガラスに備わるステレオ・カメラと、サテライト・ナビから得ることのできる情報を利用してコントロールされる。

このヘッドランプのおかげで、対向車のドライバーに眩しい思いをさせること無く光軸を即座に調整することができるようになっているとメルセデスは言う。

コーナリングに差し掛かる前にも、その先の道路状況を予測しながら照射角度を随時変更し、旋回中にも左右を照射することによって常に道の両サイドが照らされるのである。

また最新のCLSはすべてコマンド・オンラインを備え、新しいサテライト・ナビとインフォテイメント・システムは組み込み型のSIMカードによってウェブに接続される。したがって常にドライバーはメルセデスのウェブサイトと交信しリアルタイムで情報を収集できることになるのだ。

■どんな感じ?

ある意味CLSのようなクルマは合理性を超えた所に位置すると言っていいだろう。CLSの場合は、ドラマティックな外観のスタイリングだけでなく、各種スイッチの高いクオリティのおかげで特に内装の仕上げの美しさも購入者の目を引くはずだ。

ロンドンの中心部から西サセックスにあるグッドウッドまで、ハーマン・カードン製サウンド・システムとキーレス・ゴー(£2,395=35万円)、電動ルーフ、メモリー・シート、バック・カメラ(£3,595=53万円)の追加オプション抜きの標準モデルのV6ディーゼルCLS350をテストした。

オプション抜きでの価格は4ドアのベントレーの半分くらいで、CLSの美しいプロポーションを考えれば十分お得だと言えよう。

高級感のあるフィッティングと完成度、さらに素晴らしいエンジニアリングを兼ね備えた乗りやすい車は案外CLSの他に見つけづらいかもしれない。

幸運にもCLS350を乗ったあとに、C220ディーゼルを同じルートで乗ることが出来たのだが、CクラスにはCLSクラスには介入することの出来ない素晴らしい能力があるということを感じた。言い換えれば、CLSクラスにもまだまだ伸びしろが用意されているということだ。

というものの、CLSの新しいディーゼル・エンジンと9速ATのなす共同作業の上を行くものは無いと思える。エンジンは洗練され、オートマティックの仕立ては実に素晴らしいのだ。減速した際にも、素早く適切にダウン・シフトしてくれた。

しかしながら、現行のCクラスと比べるとCLSは2点において後れを取っている部分がある。ひとつは英国のような各所に砂利が散らばった悪名高き路面におけるタイヤ・ノイズだ。Cクラスでもわずかに苦しめられていることが認められるが、CLSの場合はCクラスのそれよりも目立つ結果となった。

さらにもう一点は、シャシーのタッチだ。Cクラスの場合、ドライバーの気まぐれで車線変更を行ったとしても迅速に、そして滑らかに追従してくれるのだが、Cクラスの場合は一つ一つの動作に鈍さがあり、仮に急ぎの場合はストレスを感じることになるだろう。

■「買い」か?

頭で考えるよりも、心をどれくらい突き動かしてくれるかで判断するといいだろう。したがって明確に買い、だ。ルックスは最高で(シューティングブレイクは特に)、仕立ても素晴らしい。その上、他のラグジュアリー・カーに比べてお値打ちでもある。

後にデビューする予定の次期モデルがロード・ノイズや敏捷性に磨きがかかっていることに疑いの余地はないが、デビューまでにはあと3年は掛かるだろう。だからといって、現行モデルに対して不満を感じる向きはほとんどいないはずだ。

(ヒルトン・ホロウェイ)