BMW Z8にクーペがあったなら スミット・ヴィークル・エンジニアリング・オレサへ試乗 後編

公開 : 2022.06.12 08:26  更新 : 2022.08.08 07:09

クーペが存在しなかった台数限定のBMW Z8。ある兄弟によって生み出された特別なクーペへ、英国編集部が試乗しました。

雰囲気はオールドスクールなマッスルカー

BMW M3用の4.4L V8エンジンを搭載したオレサを、開発者のスミット兄弟は45万ドル(約5850万円)で売りたいと考えている。Z4の直列6気筒エンジンなら、35万ドル(約4550万円)になるそうだ。

このクルマの印象がどんなものか、パシフィックコースト・ハイウェイを一緒にドライブして欲しいと、スミット兄弟が提案してくれた。もちろん、断る理由などない。

スミット・ヴィークル・エンジニアリング・オレサ(北米仕様)
スミット・ヴィークル・エンジニアリング・オレサ(北米仕様)

着座位置は低い。ドライビングポジションは若干オフセットしているように感じたが、座って1分も経てば忘れてしまう。ステアリングホイールの調整域は大きく、シフトレバーはドライバーに近い。3枚のペダルの踏みごたえは重めで、典型的なBMWのもの。

ミラーの位置を調整して、V8エンジンを目覚めさせる。ボンネットが前方に伸び、リアアクスルのそばに座っているような印象は、Z4のそれに近い。オールドスクールなマッスルカーや、グランドツアラーのような雰囲気がある。

シャシーのチューニングは、まだ最終的な詰めまでは完了していない。サスペンションのブッシュも仮のもので、ステアリングホイールへはキックバックが伝わってきていた。調整式のKW社製サスペンションも、ちょっと硬すぎるかもしれない。

ステアリングはもっと重くしたいと、2人は説明していた。同時に、サーキットに主軸をおいたモデルではなく、今日のような公道を楽しめるクーペにしたいとも話す。

ドライビング体験を輝かせるV8エンジン

スミット兄弟は、クルマの改善点をリストアップして欲しいと、筆者に尋ねてくる。やり残している仕事を改めて確認することで、自信が持てるという。

乗り心地が硬めなこと、ステアリングホイールが軽めなこと、キックバックが感取されることを、彼らと共有する。そして、アメリカ人がキャニオン・ロードと呼ぶワインディングへ入る。

スミット・ヴィークル・エンジニアリング・オレサ(北米仕様)
スミット・ヴィークル・エンジニアリング・オレサ(北米仕様)

勾配のあるカーブが続く環境で、オレサの印象は見違えて良くなる。美しいスタイリングを除いて、ドライビング体験を輝かせているのが、自然吸気のV8エンジン。意欲的で多面的な正確を持ち合わせている。

優しくアクセルペダルを倒し、低回転域を使って運転している限り、オレサは穏やかなクルーザーのようにアスファルトを流せる。ちょっと、低音が大きめだが。

そこから右足へ力を込めると、マッスルカーのようにパワーとサウンドが溢れ出る。中回転域でもたくましく、鋭く反応し、回転数を調整しながらのシフトダウンもしやすい。

さらに高回転域では、レーシングカーのようにややサウンドが抑えられ、レブリミットめがけて鋭さが増していく。並外れたキャラクターの持ち主だ。

ヘアピンカーブが連続する区間では、ステアリングの軽さも気にならなくなった。90度曲がるようなキツめのS字コーナーでは、むしろ丁度いい。乗り心地が硬めだとも感じない。シャシーバランスも良く、フロントヘビーなところもない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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