BMW Z8試乗記 相場は正直? 「オリジナル」の理由を探る

公開 : 2017.10.15 17:10  更新 : 2017.10.16 06:06

BMW Z8、今やどんどん価格があがっているんだそうです。単なる過去の名車の「コピー品」ではなく、まさしくオリジナルだと英国編集部は胸を張ります。どうしてでしょうか? 試乗で明らかになりました。

もくじ

レトロブームに乗っかったわけではない
コンセプトから、ほとんど変わらなかった
目を見張る勢いで上がりゆく中古相場
処理の安っぽさを補ってお釣りが来る
過去の名作の低解像度コピーではない

レトロブームに乗っかったわけではない

渋滞が始まり、じきに流れなくなりそうだ。夕刻のバークシャー。ラッシュアワーが始まりかけている。ぼやぼやしている場合ではない。

アクセルを踏み込むと、最高速に達したホットなZ8が砲撃のような音量でダンスビートを奏で、ドライバーの表情が掛け値ない驚きを示す。

いかにもボンドカー風のキャビンと劇的なスタイリングで、BMW Z8は、目立つことこの上ない。まるで、「こっちを見ろ」と大声で叫んでいるようだが、驚くべき点は、これまで、このクルマの印象を語ってくれたひとが、いずれもZ8をつい最近デビューしたニューモデルだと信じて疑わないことだ。

けれど実は、スタイルに限って言えば、1997年に東京モーターショーでコンセプトカーの形で初公開された時点でさえ、完全に目新しいものではなかった。

レトロなデザインが流行った90年代後半、BMWも、他の多くのメーカーと同様、過去の名車のスタイルをこのスポーツカーとして蘇らせることに吝かではなかった。

Z8は、名車507を堂々とモチーフにしている。そして、1950年代に非常に魅力的だった507よりもはるかに深く構想が練られていたにもかかわらず、507の場合と同様、この魅力的なソフトトップ車をめぐって様々な評価が下された。今となっては信じがたい話だが、Z8の値段がつるべ落としに下落した時期もあった。

しかし、それはかなり昔の話だ。

Z8がレトロブームの始まる前に構想されていた点を考えると、このクルマが生産に漕ぎ着けたという事実だけでも、驚くべきことだ。逸話によれば、このクルマの構想が生まれたのは、1993年に工場のミュージアムで開かれた退職祝いの席だったと言う。

当時のBMW会長ベルント・ピシェッツリーダー博士と彼の右腕だったヴォルフガング・ライツレが、同僚の新たな門出を祝って乾杯した後、館内を散策し始めた。

507の前で足を止めると、ふたりに懐古の情が湧き、507をモチーフにした新型車を出してはどうかという話で盛り上がってしまった。そして彼らのブレインストーミングの成果が、4年後に日本で初公開され、熱狂的に歓迎されたのだ。

ただし、出来上がったZ07と呼ばれるコンセプトカーは、あくまでもショーカーだった。

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