夜間のEV充電は安全なの? 人目につかない暗い場所での充電に警鐘 海外で防犯対策求める声も

公開 : 2022.06.28 17:45

エンジン車の給油とは異なり、EVの充電には時間がかかります。深夜に外出先で充電が必要となった場合、防犯対策は十分なのか。懸念の声も上がっています。

EV充電時間 夜間の安全性に懸念

世界各地でクルマの電動化が進み、充電ステーションが次々と設置される中、夜間に充電することの安全性について懸念の声が上がっている。

エンジン車への給油とは異なり、EVの充電は2~3分で終わる作業ではない。車種や充電器の性能、また充電量にも左右されるが、一般的に急速充電では30~40分程度かかる。もちろん、その間は運転できないので、クルマの近くで待機する必要がある。

自宅での充電はさておき、慣れない外出先の充電ステーションでも安心して利用できるよう対策が求められている。
自宅での充電はさておき、慣れない外出先の充電ステーションでも安心して利用できるよう対策が求められている。

暗い時間帯にEVの充電が必要となっても、休んだり暖を取ったりする場所がないことがある。建物や道路から離れた、人目につきにくい場所に充電器が設置されるケースもあり、防犯対策が必要とされている。

また、充電器の信頼性についても懸念がある。もし、充電器が何らかの不具合で機能しない場合、電力不足のEVは立ち往生することになってしまう。EVの航続距離への不安に拍車をかけることになりかねない。

こうした問題から、英国では政府に対して、夜間のEV充電の安全性を確保するよう求める動きが出てきている。RAC(英国王立自動車クラブ)は、AUTOCARの取材に対し、EVの充電環境は現在、ガソリンスタンドでの給油よりもまだ「劣る」と述べている。

RACのオペレーション・ディレクターであるサイモン・ウィリアムズ氏は、こう話す。

「多くのドライバーがEVに乗り換える、または乗り換えを検討する中、公共の充電ネットワークが『適格なもの』かどうかを確認することが重要です」

「明るい場所での充電はまだしも、いくつかの例外を除いて、自宅から離れた場所での充電はまったく異なる体験であり、特に夕暮れ時には劣悪なものになる可能性があります」

「EVの充電時間は、ガソリン車やディーゼル車の給油時間よりも長いため、充電環境を安全で快適なものとすることが重要です。最近行われた、ドライバーの充電環境全般の改善に関する英国政府の協議は歓迎すべき前進でした。しかし、夜間の充電については、さらに具体的に焦点を当てる必要があります」

急増する充電施設 防犯対策は?

数週間前、英国運輸省は、国内には現在3万290基の公共EV充電器があり、昨年同時期より33%増加していると発表した。また、夜間にEVを充電する人々の安全を確保することが優先事項であると主張。同省の広報担当者は、次のようにコメントしている。

「我々は、EVを充電する際に、どこであろうと誰もが安全であると感じられるようにすることを約束します」

英国政府は2030年までにEV充電器の数を30万か所(現在の10倍)に拡大する計画だ。
英国政府は2030年までにEV充電器の数を30万か所(現在の10倍)に拡大する計画だ。

「政府は、英国全土における充電設備拡大を支援するために16億ポンド(約2650億円)を拠出しました。また、最近発表したEVインフラ戦略の一環として、公共充電器の信頼性を向上させるために新たな法的要件を設定する予定です」

しかし、充電ステーションを運営する民間企業は、自社のステーションはすでに十分安全だと主張している。

フォルクスワーゲンアウディBMWなど大手自動車メーカーが出資するアイオニティ(Ionity)は、欧州24か国で充電ネットワークを運営する充電サービス会社だ。同社は、充電施設は「ほとんどが高速道路沿いのパーキングエリアにあり、充電を待つ人のための設備もある」ため、追加の対策は必要ないとしている。しかし、現場の照明が十分でない場合は、照明付きの柱を設置して「当社のすべての高出力充電サイトで十分な明るさを確保する」という。

「当社の目標は、お客様が充電ができず、使える充電器が見つからないという状況に陥らないようにすることです。当社は、6~18基の充電器を備えたハブを設計し、孤立感のない賑やかな場所を作り出しています」とアイオニティ。

一方、英国で58か所のサービスステーションを運営するモト(Moto)社は、夜間のドライバーの安全が「当社のEV充電インフラにとって重要なポイント」であり、同社の充電ステーションは24時間365日有人の主要建物の近くにあると述べている。

「これは、モト・サービスでの給油や充電の際に、すべてのドライバーが快適に過ごせるようにするためです。英国内のすべてのEV充電エリアには、適切な水準の照明が設置されています。これは、ドライバーが見ることも見られることもできるようにするためです」

「また、必要かつ適切と思われるステーションでは、セキュリティの設定を行っています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

関連テーマ

おすすめ記事

 

EVの人気画像