世界最速を目指すV10マシン ロダンFZero F1より軽いサーキット専用車、来年生産開始

公開 : 2022.08.10 18:05

資金に余裕があるからこそ実現できたクルマ

以下、ロダン・カーズ創設者デヴィッド・ディッカーへのインタビュー内容。

――究極のクルマを作ろうと思ったのはいつ頃ですか?

「2016年に『何が何でもやるんだ』と決意しましたが、それは資金があったからです。自分のライフスタイルを捨ててまでやるつもりはなかったので、ちゃんとしたバッファ(余裕)を持ちたかった。多くの人は、このようなプロジェクトを立ち上げると、持っているお金をすべて使ってしまうんです。失敗したら、おしまいですよ」

――なぜ今、発表したのでしょうか?

ロダン・カーズ創設者デヴィッド・ディッカー
ロダン・カーズ創設者デヴィッド・ディッカー    AUTOCAR

「レッドブルのRB17がきっかけでしょう。ロダン・カーズは何年も前からこのプロトタイプ(FZero)に取り組んできましたが、レッドブルが500万ポンドのクルマを50台売れると考えているのなら、我々の出番もあるはずだと思いました。彼らは、わたし達に自信を与えてくれたのです」

――180万ポンドのクルマを作るために必要な資金は、どのように賄うのでしょう?

「まずはお金を稼がないといけません。わたしは、1978年にコンピュータの流通事業であるディッカー・データ社を立ち上げ、2011年に株式を公開しました。当初の目標は、1か月に10台のコンピュータを納品することでした。うまくいくとは思っていたのですが、予想以上にかなりうまくいきました。今では1日あたり800万~900万ドル規模のビジネスに成長しました」

――ある意味、180万ポンドという価格は安いように思えます。どうしてそのような価格を実現できたのですか?

「大きな理由の1つは、スプリング、シール、ベアリング以外のすべてを自分たちで作ることです。ボルトも自分たちで作る。エンジンの鋳造もやるし、クランクシャフトも作る。クランクシャフトは、現在F1のサプライヤーが作っているもので2万3000ポンド(約375万円)もします。しかし、クランクシャフトを作るためのビレットは795ポンド(約13万円)です。そこだけでも、かなり節約できるんですよ」

――密閉式のコックピットにしたのは空力効率が理由なのでしょうか?

「もちろんその通りですが、他の理由もあります。オープンコックピットのクルマは、スピードが出ると頭が大きく動くので、運転しにくいのですが、キャノピーがあれば、静かに過ごすことができます。また、車内はエアコンが効いているので、どんな地域でも走らせることができます。中東やオーストラリアでは、それが大きな違いになります」

――現在生産しているFZedは、オープンホイールですよね。なぜ、FZeroではエンベロープ型のボディにしたのですか?

「フルボディにすることで、高速回転する車輪という怪物に対処しなくて済むからです。レギュレーションが許せば、F1は何年も前にフルボディにしていたはずです」

――公道走行可能な仕様も作るのでしょうか?

「公道向けのクルマについては何度も話し合ってきましたし、作る気もあります。ですが、まずこのFZeroの最初のロットを作って納車して、それから考えようと思います」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

関連テーマ

おすすめ記事

 

フォーミュラ1の人気画像