ビッグモーター 苦情相談が急増 消費者庁やっと公表 9割が売買トラブル

公開 : 2023.09.14 18:30

相談事例の9割を占める中古車売買時のトラブル

一方、車検不正の方はというと今年2月には佐賀唐津店、3月に熊本浜線店、そして6月には宇都宮南店でも不正が明らかになる。

熊本と宇都宮では指定工場の指定取り消しという最も重い行政処分を国交省・地方運輸局から下されている。

ビッグモーター和泉伸二社長が8月末に全社員に向けて送ったメール。
ビッグモーター和泉伸二社長が8月末に全社員に向けて送ったメール。

そして7月末からは全国各地で街路樹問題が発覚し、こちらもビッグモーター側は「本部の指示でおこなった」と街路樹を許可なく伐採したり除草剤を使用して枯らしたりしたことを認めている。

つまり、ビッグモーター自らが不正行為を認めているのは、
・保険金不正請求
・車検の不正
・街路樹問題
この3点となる。

しかし、これら以外にビッグモーターに関しては膨大な数の「不正行為」が次々と全国で明らかになってきている。

その代表的なことが相談事例の9割を占める中古車売買時のトラブルだ。「売買時」に含まれるものもあると思うが、ローン契約時の不正、ボディコーティング不正、買取後の不正な減額交渉、冠水車の販売を認めず返金にも対応しない、ビッグモーター側のミスでグレード違いで販売したのに高額なキャンセル料を請求する、無料で付けるという約束の22万円のオプション品が納車時の契約書ではなんと「有料」で計上されていたこともあった。

しかしこれらに関してメディアがビッグモーター広報部に確認しても「そのような事実は認められていません」などの回答でまともに関わろうともしない。

つまり、一般ユーザーに対する詐欺的な行為はまだ何1つ認めていないし解決もしていないことになる。

ビッグモーター和泉伸二社長が8月末に全社員に向けて送ったメールを読んでみるとよくわかる。

「現在、ご被害に遭われたお客様救済に向けて各損害保険会社様と協議を重ねている段階です。1日も早い救済解決に向けて引き続き本部では外部専門家の方々と取り組みを進めて参ります」

これを読めば、一般の客に関しての被害は保険金不正請求の部分だけを被害として認めていると解釈できる。

実際には一般の客に直接かかわる詐欺的な行為ではなく、保険会社を騙していたことになるため等級の復活や保険料値上がり分の返金などは保険会社から契約者に対しておこなわれることになる。

車検や修理の部分ではどんなトラブルがあるのか

車検や修理の分野でトラブル相談がわずか数パーセントであることは、車検や修理の分野では客にあまり気づかれることなく不正行為がおこなわれていたと考えてよいだろう。

筆者が取材を進める中で車検や修理の分野では具体的に以下のようなトラブルが発生していることがわかっている。

ビッグモーターに関する消費者生活相談の状況等について。
ビッグモーターに関する消費者生活相談の状況等について。

・最初に見積もりした価格より実際に車検整備をおこなった後では13万円も高くなっていた
・車検を受けた直後にクルマの調子が悪くなった
・車検に出したら、身に覚えがない故障個所を指摘された
・ブーツを損傷した覚えがないのに鋭利な刃物で切られたあとがあった
・事故で板金修理に出したが、出したときにはなかったはずの傷の指摘を受け修理代が上乗せされた
・修理の際の工賃が異常に高い。ディーラーと比べても15分程度の作業の工賃が2万円以上

ところで、今回、消費者庁が発表した苦情相談の件数と内訳、推移であるが、実はこれらは消費者庁が自発的に公表したものではない。1人の国会議員の尽力によるものであるとお伝えしておきたい。

日本維新の会衆議院議員浅川義治氏がその人で実は浅川氏は昨年11月の臨時国会において、早くもビッグモーターの不正行為について国会質問を行っている。

また、国会質問の前日には六本木にあるビッグモーターの本社にも出向き、現副社長の石橋光国氏と面談もしている。

浅川氏は7月中旬に消費者庁に資料請求を行っており、およそ2週間経って消費者庁から回答があり、ビッグモーター関係相談の国民生活センターと全国の消費者生活センターへ寄せられた件数が公表されている。

さらに、その後に資料請求していた内訳については9月5日に記者会見が開かれ、公開されている。

浅川氏は消費者庁の対応について
「2013年の時点ですでにビッグモーターに関する相談事例は260件もありました。どうしてもっと早く公表できないのか、今後公表制度も検討しなければならないと思います」と憤る。

実際、消費者庁の動きは非常に遅く、ビッグモーターで困って消費生活センターや国民生活センターに相談した消費者たちからは不満の声も多数あがっている。

消費者相手だと個々の事例が異なるため、動きが鈍いのは仕方ないだろうが、実際数万円~数百万円の被害を受けている被害者はおそらく数千人かそれ以上かで存在している。

ビッグモーターが信頼を取り戻して、まっとうな商売を続けたいのなら、まずはビッグモーターを信じてクルマを購入したり売却したりして騙されてきた被害者の方々への救済が最初だと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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