日本初の純国産車から25年 トヨタ・クラウン(4代目) クジラ・クーペの不思議な魅力(2)

公開 : 2023.10.22 17:46

低速域で重いステアリング ストレートは安定

リアヒンジ式のボンネットを持ち上げると、クロスフローの直列6気筒エンジンが姿を表す。2バレルの愛三社製ダウンドラフトキャブレターが載り、ブルーに塗装されたエグゾーストマニフォールドが目を引く。メルセデス・ベンツのユニットにも似ている。

インテリアは、ブラックの合皮で覆われている。友人の父が乗っていた、クラウン・ステーションワゴンを思い出させる。

トヨタ・クラウン(4代目/1971〜1974年/英国仕様) 
トヨタ・クラウン(4代目/1971〜1974年/英国仕様) 

ドアは長く、リアシートへの乗り降りは想像ほど大変ではない。Cピラーが太く、斜め後方の視界を遮っている。ダッシュボードとステアリングホイールのデザインは、美しいとはいえないだろう。タコメーター以外の計器類が、正面にずらりと並ぶ。

集中ドアロックが備わり、トランクリッドは車内から解錠でき、サイドウインドウはすべて電動。リアシート側からもラジオを操作できる。キーをイグニッションの位置で挿しっぱなしにしていると、ブザーが警告を続ける。

運転席からの視界は、水平に伸びるボンネットの主張が強い。2.6L直列6気筒エンジンが遠くからノイズを放つ。3速ATのシフトチェンジは滑らか。キックダウンの反応も悪くないが、目立って加速力が増すわけではない。ロードノイズは小さめだ。

ブレーキングでノーズを沈めるが、安定してストレートを駆け抜けられる。大きなステアリングホイールは、低速域では明確に重い。レシオはスローで、小回りが利くとはいえない。思い切り腕を動かす必要があり、繊細な操舵は難しい。

不思議な魅力の超希少なクジラのクーペ

クラウン・ハードトップクーペの走行フィールは、至って穏やか。アグレッシブという言葉とは無縁で、これは当時の英国人がトヨタを支持した理由でもあった。

高級車という市場では、価格価値以上にブランドのステータスが重要視される。その点で、4代目クラウンの訴求力は及ばなかった。とはいえ、初の純国産車から25年後に誕生したモデルでありながら、印象的な水準に届いていたことは明らかだろう。

トヨタ・クラウン(4代目/1971〜1974年/英国仕様) 
トヨタ・クラウン(4代目/1971〜1974年/英国仕様) 

それから50年が経過し、超希少なクジラのクーペは、唯一といえる不思議な魅力を放っている。確かに、要点を逃していた側面もあるが、トヨタによる賢明な努力が表れている。高級サルーン最高の1台、レクサスの原点が生まれていたことは間違いない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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