最後のFR+MT シボレー・コルベット C7 MRでもプッシュロッドは変わらぬC8 アメリカン・スポーツの代名詞(4)

公開 : 2023.11.12 17:46

ミドシップ化を叶えたコルベット C8(2020年〜)

初代から続くレイアウトの最終進化系として、C7のZR1は大きな節目を刻んだ。そして遂に、8代目のC8でミドシップ化が果たされた。シボレーの技術者だったゾーラ・アーカス・ダントフ氏が4代目で挑んだ試みは、約40年の時を経て叶えられた。

C8の登場は2020年。長年のコルベット・ファンがミドシップ化をどう受け止めるのか、シボレーも懸念していたようだが、動的能力の向上は間違いなかった。

シボレー・コルベット C8 スティングレイ(2020年〜/英国仕様)
シボレー・コルベット C8 スティングレイ(2020年〜/英国仕様)

フロントエンジン・リアドライブのシャシーに更なるパワーを加えても、ホイールスピンが増えるに過ぎないといえた。高性能化には、一層のトラクションが必要だった。

C8の正式発表に先駆けて、いくつかの噂がインターネットで広まった。デュアルクラッチATの獲得や、オーバーヘッドカム化、V型6気筒への変更などがささやかれた。その中で本当だったのは、トランスミッションのみだった。

8速デュアルクラッチATは、極めて迅速な変速を実現。マニュアル・モードを備え、ドライバーの望み通りにギアを選ぶこともできる。

主任技術者を努めたタッジ・ジュクター氏は、シフトリンケージの空間を省くことで、シャシー剛性を高められたと主張する。パッケージングの面でもメリットは大きかったという。そのかわり、MTは選択できなくなった。

コルベットでもATが占める割合は年々上昇し、C7世代の末期には78%に達していたが、2割以上のユーザーはMTを選んでいた。1955年以来初めてATしか選べなくなったという事実が、ミドシップ化より物議を醸したといっていい。

これまでは味わえなかった敏捷な足取り

C8では、他にも大きな変更が数多く加えられている。リア・サスペンションを支えてきた横置きのリーフスプリングは退役。コイルスプリングへ置き換えられた。

C4以来の伝統といえた、フロア部分を四角く囲うペリメーター・フレームも役目を終えた。エンジンの潤滑系には、ドライサンプ・システムが採用されている。

シボレー・コルベット C8 スティングレイ(2020年〜/英国仕様)
シボレー・コルベット C8 スティングレイ(2020年〜/英国仕様)

今回のC8は、初代C1の生産開始から70周年を記念した、70thアニバーサリー。英国の一般道へ出てみると、ドライビングポジションが大きく変わったことへ気づく。窓で切り取られる景色もだいぶ変化した。

着座位置が前方へずれ、旋回時にはドライバーの足元ではなく、腰周りを軸に回転しているように感じる。キャビンの中央を大きなセンタートンネルが貫き、リアのバルクヘッドは高くそびえ、車内は包み込まれたような雰囲気だ。

速度が上昇すると、安心感が増していく。ミドシップのシャシーは好バランスで、足取りは確実に敏捷。これまでは、味わえなかった印象といえる。

確かに、従来のコルベットのドライビング体験とは異なるだろう。C7へ寄せたようなスタイリングやインテリアは、歴代からの連続性を醸成するために、意図的に与えられたのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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