ゼロ開発のシボレー・コルベット C5 ビッグブロック再来といえたC6 アメリカン・スポーツの代名詞(3)

公開 : 2023.11.12 17:45

アメリカン・スポーツカーの代名詞、コルベット誕生から70年 コークボトルラインのC3からミドシップのC8まで 英国編集部が6世代を振り返る

ゼロから開発されたコルベット C5(1997〜2004年)

1997年にモデルチェンジされたシボレー・コルベット C5は、先代の野心やスピリットを踏襲していた。シボレーの技術者は、これまで以上の結果を得るには、全面的に再設計する必要性を理解していた。

かくして、5代目のC5では、シャシーやボディだけでなく、エンジンやトランスミッションも一新されている。歴代で初めて、ゼロから開発されたといっていい。

シボレー・コルベット C5 Z06(2001〜2004年)
シボレー・コルベット C5 Z06(2001〜2004年)

キャビンの剛性を保持するスケルトン構造は、4代目のC4と共有していた。だが、高剛性のセンタートンネルがフレームを貫き、シャシー剛性は従来から450%も増していた。シボレーは、1500点もの部品を設計し直したという。

実際に乗ってみると、その違いは明らか。姿勢制御は引き締まり、路面の隆起部分などを通過しても、ボディはきしまない。ワダチを越えても、不自然なしなりはない。

C5の高性能仕様、Z06では、まさに岩盤のような強固さを感じる。コーナリングやブレーキングでも、極めて安定している。先代は欧州のライバルへ届いていなかったことは否定できないが、間違いなくその差を縮めている。

しかし最もファンを喜ばせた変化は、20世紀の終わりと同時に、エンジンへ馬力が戻ってきたことだろう。ベーシックなパワーユニットとなったのが、新設計のオールアルミ・スモールブロック。LS1と呼ばれるV型8気筒で、最高出力355psを実現していた。

ル・マン24時間レースでクラス優勝

メンテナンスの容易なオーバーヘッドバルブ構造を採用し、小型・軽量でシンプルだった。その評価は高く、エンジンスワップ時の定番ユニットとして、確かな人気を集めた。2001年にリリースされたZ06にも、チューニングが加えられ採用されている。

圧縮比を高め、ヘッド内部の気流を見直し、ハイリフトカムを採用。ユニット名もLS6へ改称され、最高出力390psを獲得した。2002年には410psへ強化されている。

シボレー・コルベット C5 Z06(2001〜2004年)
シボレー・コルベット C5 Z06(2001〜2004年)

Z06で選択できたボディスタイルは、ハードトップのみ。本気のスポーツカーとして、タルガトップやコンバーチブルは設定されていない。

サスペンションも強化され、歴代初めて、Z06は1Gを超えるコーナリング・フォースに耐えることが可能だった。その足腰は、現在でもフラットな印象を与える。

身のこなしは間違いなくタイト。英国の狭い公道では、C4のZR-1はリアアクスルが若干ルーズに感じられたのに対し、C5のZ06では限界領域が上昇している。意欲的に運転したいと思わせる。

実際、C5の能力は高い水準にあった。2001年と2002年、2004年のル・マン24時間レースで、見事にクラス優勝を勝ち取っている。誇るべき偉業だったといっていい。

これを記念し、シボレーはZ06をベースにしたル・マン・コメモラティブ・エディションを2004年に発売している。今回ご登場願ったC5も、その1台だ。

ブルーのボディにレッドとホワイトのストライプが施され、ボンネットはカーボン製。それ以外の装備は、2003年の50周年記念仕様と共通している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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