日本で電気自動車が普及しない理由 乗り遅れたのか、それとも… 英国人記者が考えてみた

公開 : 2023.11.16 18:05

世界の潮流に乗り始めたが…

日本では今、潮目が変わりつつある。EVの成長は避けられないと思われたため、日本の自動車メーカーは遅ればせながら対応に動いている。トヨタの豊田章男会長は2021年後半、数兆円規模の投資計画の一環として、トヨタとレクサスから2030年までに30台の新型EVを発売する計画を明らかにし、先ごろ開催されたジャパンモビリティショーでその第一弾を公開した。同じ場で日産も5台の新しい電動コンセプトカーを披露し、内田誠CEOは、中国の自動車メーカーがEV開発に関する既存の体制に「警鐘」を鳴らしたと発言して話題となった。自動車メーカーにとって大きな稼ぎ頭だった中国への輸入車需要も、国産EVの台頭で冷え込んでいる。

「トヨタが新型EVに注力すると決断したと同時に、中国市場は海外ブランド、特に日本や韓国のブランドに冷淡になった」とフィオラニ氏は言う。

マツダMX-30は意図的に小型バッテリーを採用することでコスト低減と軽量化を図った。
マツダMX-30は意図的に小型バッテリーを採用することでコスト低減と軽量化を図った。

ジャパンモビリティショーの実行委員長であるトヨタの長田准CCO(チーフコミュニケーションオフィサー)は、日本がEVに出遅れているとの指摘を否定し、業界は「他の自動車技術の開発」に忙しかったと言う。

しかし、BEV(バッテリーEV)が「決定的に欠けている部分」であり、現在開発を加速させていることは認めつつも、コストやニーズが大きく異なる世界の主要市場のほとんどすべてに向けて新型車を開発するということから、トヨタのような世界的大企業は常に「マルチ・パスウェイ」を歩んでいると強調した。トヨタが2030年までに350万台のBEVを販売するという豊田章男会長の野望を達成したとしても、それは世界販売台数の30~40%程度に過ぎない。

日本はこれまで複数のEVモデルを製造してきたが、マツダのMX-30やホンダeのように、意図的に小型バッテリーを採用する自動車メーカーもある。これは価値あるアイデアだが、今まで消費者に敬遠されてきた。

「消費者の立場からすれば、大きければ大きいほどいいと考えるのが普通でしょう」とマツダのガイトン氏は言う。「MX-30は、日常的に使える航続距離を提供していると思います。100kWhではなく30kWh程度のバッテリーであれば、そのバッテリーに含まれる貴重な資源を3人で(購入して)使うことができるのです」

「そうすれば、表向きは1人ではなく、3人のドライバーがカーボンニュートラルな運転をすることになる。これは非常に合理的であり、日本におけるプラグマティズム(実用主義)と相通じるものがあります」

レクサスのデザイン責任者であるサイモン・ハンフリーズ氏は、「航続距離の許容度が下がれば(EVの)コストは下がる。お客様が決めることです」と述べている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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