【凍結路もグリップ】ダンロップ・シンクロウェザーの実力を検証:実践編 ドライから圧雪まで高い走行性能 

公開 : 2025.03.03 15:00

冬タイヤに限りなく近い氷雪路性能

シンクロウェザーはカテゴリー分けするとオールシーズンタイヤに属しています。一般的に、夏も冬も走れるオールマイティな性能が売りですが、大雑把な言い方をすると、オールシーズンタイヤはサマータイヤのコンパウンドを使って夏のドライ路面の性能を確保し、雪道でのトラクション性能はトレッドパターンを工夫することで作り出しています。

だから、トラクション性能が効果を発揮する雪道では何とか走れますが、ゴムの柔軟性が作り出すグリップ性能が必要な凍結路は苦手でした。だから凍結路の下りはオールシーズンタイヤが最も苦手とするシチュエーションなわけです。

オールシーズンタイヤは大雑把に言えば、夏用コンパウンドで冬用トレッドパターンを作って雪道グリップを生むが、シンクロウェザーはコンパウンドの柔軟性で凍結路グリップも作り出している。

ところが、シンクロウェザーはその状況で、明らかにゴムの柔軟性が作り出すコンパウンドグリップを発揮して凍結した路面をとらえ、何ならブレーキで期待以上の減速Gまで発揮できる能力を披露して見せたのです。

きわめて冬が得意なオールシーズンタイヤ、それがシンクロウェザーの性格の端的な形容だと思えた。

こうなると、勢いでスタッドレスタイヤに匹敵する……などと書きたくなってしまいますが、そこは開発の目的や性能の根幹にかかわる部分。スタッドレスタイヤの優位性は氷雪路を含む冬道全般、あらゆる温度域で性能を発揮してくれるところにあります。

シンクロウェザーが、それに近い性能を備えていると感じたのは錯覚ではありませんが、そう思わせた要因としては、ブロック剛性の高さからくるダイレクトなインフォメーション性もあると思います。トラクションの件しかり、下り勾配のアイスブレーキの件しかり。グリップの変化が予想以上に手元へ伝わってくるので、タイヤの様子がはっきりと感じ取れて、スロットルやブレーキの強弱を加減しやすいのです。

水と温度をスイッチにして切り替わるコンパウンドの性質。その詳細は、座学編での説明をご参照いただきたい。

今回は、さまざまな冬道を実際に走ることができましたが、シンクロウェザーは想像以上に雪道・凍結路での性能の高さを見せてくれたのでした。ただひとつ誤解を招かないように補足しておくとすれば、コンパウンドの得意とする温度領域は、サマータイヤと比べやや冬寄りに感じられました。だから夏が苦手というわけではありませんが、タイヤを酷使するスポーティな走り、積載量が多い負荷の大きな使い方にはあまり向かないと思います。それさえ知っておけば、冬が得意なオールシーズンタイヤと言いたくなるほど、オールマイティなタイヤと言っていいと思います。

スタッドレスに近い氷雪路面やウェット路面での性能と、サマータイヤに近いドライ性能を併せ持つオールシーズンタイヤ。その性格や限界を把握すれば、季節を問わないドライブが楽しめそうだ。

冬道を躊躇することなく走れる安心感は普段の生活で便利なだけでなく、季節ごとに移り変わるドライブシーンをきっと広げてくれることでしょう。

ダンロップ・シンクロウェザー 公式サイトを見る

記事に関わった人々

  • 執筆

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。
  • 撮影

    田中秀宣

    Hidenobu Tanaka

    写真が好きで、車が好きで、こんな仕事をやっています。
    趣味車は89年式デルタ・インテグラーレ。
  • 編集

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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