【第13回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~改めて知りたい タイヤの作り方~

公開 : 2025.10.15 12:05

タイヤのことならなんでも知りたいサイトウサトシが、30年以上蓄積した知識やエピソードを惜しみなく披露するこのブログ。第13回は、タイヤの製造工程について、改めておさらいします。

いろんなパーツを巻いて挟んで

タイヤメーカーのエンジニアの方と話をしていると、わりと頻繁に『組み立てる』という言葉が出てきます。

黒くてツルンとしていて、円いドーナツのような形のタイヤの、どこを組み立てるのだろう? 最初にその言葉を聞いた時には違和感しかなく、そう思う一方で、組み立てるというのだから、何かを組み立てているはずで、さて、どこをどう組み立てるのだろう? なんて疑問も沸いてきたのでした。

タイヤってゴムでできている、というのはわかるのですが、その製造工程って?(写真はイメージです)
タイヤってゴムでできている、というのはわかるのですが、その製造工程って?(写真はイメージです)    AUTOCAR JAPAN

思い返すと多分それが、ボクがタイヤに興味を持った理由のひとつになっているのだと思います。

ある時、タイヤ工場を見学できる機会があって、組み立てる様子を見ることができるぞと喜び勇んで行ったのですが……。

考えて見れば当たり前の話なんですが、生産性第一で作られた工場の生産工程を最初から順を追って見られるはずもなく、飛び飛びに、あるいは前後の工程を逆の順で見て、頭の中は大混乱。順番がバラバラになった紙芝居を、ストーリーを理解しようと一生懸命見ている……、そんな状態でした。

確かにいろんなパーツが集まってきて、張り付けたり巻き付けたりしているうちに、なんとなくタイヤになるらしい物体が出来上がっていて、でもそれはボクが知っているタイヤの形とは似ても似つかない樽型の物体で。それをお釜と呼ばれるモールディングに入れて挟んで、暫くするとあら不思議、ボクの知っているタイヤがゴロンと出てくるのでした。

これだけでは、全然タイヤの製造工程の説明になっていないので、もうちょっと整理してみたいと思います。

バンバリーミキサーで混ぜます

タイヤ製造の最初の工程として挙げられるのは、コンパウンドのミキシングです。『混錬』と呼ばれる、材料を混ぜ合わせる工程で、この機械にはいくつかの種類があるようですが、ボクが説明されたのはバンバリーミキサーというものでした。ちなみにバンバリーはこの機械を発明した人の名前らしいです。

イメージとしては、コンクリートミキサーのミキサー部分を縦に立てたようなサイズ感とカタチでした。ここに材料を入れて、密閉したチャンバーの中でローターが回転し、ゴムに強い力を加えながら練る工程です。

主材料のゴムコンパウンドに様々な添加物を配合していきます(写真はイメージです)。
主材料のゴムコンパウンドに様々な添加物を配合していきます(写真はイメージです)。    田中秀宣

主な材料は、合成ゴム、天然ゴム、カーボンブラック、シリカ、オイル。これでゴムコンパウンドのほぼ8割を占めます。

あとは充填剤やゴムに強度を与える加硫剤(≒硫黄)、老化防止剤を始め、様々な添加剤が配合されます。

ふと思ったのですが、スタッドレスタイヤで配合されている吸水材とか引っ掻き材などもこの段階で配合するんですね。

これらを混ぜ合わせるわけですが、ゴムはほぼ固まりで機械にかけられ、ほかの材料をとともに練っていくわけで。まんべんなく分散させて密度が均一になるように行う混錬工程って、すごいノウハウが必要ですよね。

最新のスタッドレスタイヤは、微粒シリカを、カップリング材というものを使ってポリマー(ゴム)と結びつけるんですが、いまさらながらにすごい技術だなあと感心させられます。

で、そうやって混錬されコンパウンドの素は、まずはシート状にされます。

その後、タイヤサイズに合わせて押し出し機に入れられ、トレッドブロック分の厚みを持ったトレッドの素が出来上がります。

記事に関わった人々

  • 執筆

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

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