カーレビュー

2017.03.19

マックィーンの愛した跳ね馬 ーー フェラーリ275GTB/4(1967)

フェラーリ275GTB/4

文・James Elliott 撮影・Jiulian Mackie 

[編集部より]

姉妹ウェブサイト、CLASSIC & SPORTSCARに掲載したヒストリックカーのインプレッションを転載します。その第一弾は、1967年のフェラーリ275GTB/4です。このクルマ、最初のオーナーはスティーブ・マックィーンといういわくつきのフェラーリです。

このクルマの最初のオーナーはスティーブ・マックィーン。しかもコースは貸し切り状態とくれば、こんなラッキーなことはない。ジェームズ・エリオットが275GTB/4をフィオラノで試す。

 
晩秋の太陽が西に傾くにつれ、曲面ボディを包む赤い色彩がまばゆさを増す。しかし魅惑的な曲線美に目を奪われている暇はない。一瞬たりとも気を抜かず、集中すべきときだ。フィオラノはタイトでトリッキーなコースだ。限られた敷地に建設されたから、勾配もあれば狭い立体交差もある。ヘアピンや深いコーナーにノロノロと進入してからテールを振り出すか、あるいは蛮勇を奮ってアンダーステアを出すか……。

深いバーガンディレッドのボディカラーが、モデナの陽光を浴びて鮮やかさを増す。


エンツォの「裏庭」に1972年に建設されたこのフィオラノは、1周が3km弱。ロマンティックな思いを脇にやれば、空中に結んだ靴紐のように複雑なコースだ。それでもエンスージアストなら誰もが、ここでドライブすることを夢見る。では、ここで走るに相応しいドリームカーは何か?

300台足らずしか生産されなかったフェラーリなら、役不足ではないだろう。

私にとって275GTB/4はいつでもベスト・ルッキングなフェラーリの候補であり、オールラウンドに優れたフェラーリの1台であり続けてきた。その意味でライバルになるのは、前身の250GT SWBだけだ。初期の250のV12は扱いにくいものだったが、フェラーリはそれを次第に調教し、275GTB/4のDOHC化したエンジンはスムーズでユーザー・フレンドリーになった。エンジンの改良が進むにつれ、ボディ・スタイルも変化した。250GT SWB が50年代の控え目な「ワンピース水着」を来ていたとすれば、275がまとうのは「ビキニ」と言うべきだろう。SWBのイメージを残しながらも、275 はより公然とセクシーな魅力を振りまいている。

「今日はスティーブ・マックィーンになった気分だ」と、ツイスティで起伏に富むフィオラノにチャレンジするエリオット。


取材車の275GTB/4はマラネッロのファクトリーでレストアを終えてからフィオラノに来るまで、ほんの僅かしか走っていない。つまり、このクルマが誕生したときと同じ本物の体験を再現できるということだ。レストアされたばかりのクルマの馴らし運転にはふたつの方法があるが、ラッキーなことにこの275GTB/4のオーナーは、”新車”はそれに相応しくドライブされるべきだと考えている。せっかくのフィオラノだから、真綿で優しく包むのではなく、この機会に限界を試してよいというのだ。なんと素晴らしい!

オーナーは…、少し調べればわかる著名人だが、彼としてはこのクルマと最初のオーナー、スティーブ・マックィーンに焦点を当てた記事にしたいとのこと。本人はスポットライトを避けたい意向なので、ここでは名前は伏せておく。

スピードメーターはフルスケールが180mph(288km/h)と野心的だ。


マックィーンはハリウッドのアイコンだ。彼に執着する声は近年、再び世界中で高まっている。同時に反感も拡大しているが、ひとまずこの伝説的な俳優が存命中以上に偉大だと信じるとしよう。しかし言葉では言い表せないほどの彼の神秘性を今に伝えるのはおそらく、彼自身の才能や演技というよりむしろ、彼にまつわる物の数々だ。そのひとつが今回の275GTB/4である。

ライセンスプレートはマックィーンが所有していたときと同じ“California WCT170”。ひっそりとしたフィオラノのパドックに駐車するその姿を眺めていると、ここに掲げた資料写真のように、今にも”キング・オブ・クール”(マックィーンの愛称)が現れそうな錯覚に捉われる。


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