メルセデス・マイバッハとAMG、哲学が異なる両者の共存は成立する? 『SL680モノグラム』で感じた複雑な想い【スーパーカー超王が斬る】

公開 : 2026.04.21 11:45

メルセデス・マイバッハから登場した、『SL680モノグラム・シリーズ』。スーパーカー超王こと山崎元裕がデビュー時から複雑な想いを抱いていたのは、AMGとマイバッハという哲学の異なるブランドの共存でした。

メルセデス・マイバッハが掲げる哲学

2012年に、一度はそのブランドが廃止された『マイバッハ』。その名前が新たにメルセデス・ベンツのサブブランド、『メルセデス・マイバッハ』として復活を遂げたのは2014年のことだった。

このメルセデス・マイバッハが掲げる哲学は『究極のラグジュアリー』。メルセデスAMGが『究極のパフォーマンス』を掲げていることを考えると、このふたつのブランドの違いは一目瞭然になる。

メルセデス・マイバッハから登場した、SL63をベースとした『SL680モノグラム・シリーズ』。
メルセデス・マイバッハから登場した、SL63をベースとした『SL680モノグラム・シリーズ』。    平井大介

そのメルセデス・マイバッハから、最新の『SL63』をベースとした『SL680モノグラム・シリーズ』が発表されたのは、2024年夏に開催されたペブルビーチ・コンクールデレガンスでのことだった。

ちなみに初代から数えて第7世代となる現在のSLクラスは、新開発されたプラットフォームに象徴されるように、メルセデスAMGのエンジニアリングをベースに誕生したモデル。搭載エンジンもメルセデスAMG伝統の、『One Man, One Engine』と呼ばれる手法で製作される。

従って正式な車名も、この現行型からはメルセデス・ベンツのSLではなく、メルセデスAMGのSLと呼ばれるようになった。

究極のパフォーマンスと究極のラグジュアリー

メルセデスAMGの作に、さらにメルセデス・マイバッハの手が加わることになる。それはいわば、究極のパフォーマンスと究極のラグジュアリーが共存したモデルということになるのだが、発表時に感じた個人的な気持ちは、正直に書くのならばやや複雑なものだった。

メルセデス・マイバッハからオープンモデルが登場するのは今回が初めてのことではない。今をさかのぼること10年前、彼らは『メルセデスAMG S65カブリオレ』をベースに『S650カブリオレ』をデビューさせている。

ブラックのボンネットにグレーで描かれるマイバッハ・エンブレムは、モノグラムと呼ばれる。
ブラックのボンネットにグレーで描かれるマイバッハ・エンブレムは、モノグラムと呼ばれる。    平井大介

そもそも4シーターのキャビンを持つSクラス・カブリオレには、ラグジュアリーな雰囲気が満ち溢れていたから、さらにメルセデス・マイバッハがその魅力を高めることに抵抗はなかった。

だが今回のSL680モノグラム・シリーズはやや事情が異なる。メルセデスAMG自身が求めた理想のスポーツカー像に、マイバッハがさらに手を加えることは正義といえるのか。そのような気持ちが胸にあったのは確かなところだ。

エクステリアにも独自の演出

SL680モノグラム・シリーズのエクステリアには、もちろん独自の演出がある。そもそもモノグラムとは、オブシディアン・ブラックのボンネットに、グラファイト・グレーで描かれるマイバッハ・エンブレムのパターンを意味するもの。

今回の試乗車はオパリスホワイトマグノとのツートーンカラーを採用したホワイトアンビエンスと呼ばれる仕様だったが、エクステリアではほかにも独自の演出が数多くある。

クリスタルホワイトの最高級ナッパレザーを採用した空間は、まさに贅の極み。
クリスタルホワイトの最高級ナッパレザーを採用した空間は、まさに贅の極み。    平井大介

『MAYBACH』の文字が刻まれるフロントグリルや、やはりロゴが散りばめられたアンダーグリルなどはその象徴的な例。オープン時には気づくことはないが、ソフトトップもマイバッハのロゴで彩られている。参考までにこのソフトトップは、60km/h以下ならば約15秒でフルオートマチックでの開閉を可能とする。

インテリアは、まさにメルセデス・マイバッハの誇りを具現化したかのようなフィニッシュだ。ボディカラーにコーディネートさせ、クリスタルホワイトの最高級ナッパレザーを採用した空間は、まさに贅の極みともいうべきもの。

機能面ではデジタルコクピットディスプレイも、マイバッハ専用のデザインとなっているのが注目できる。装備内容も、ブルメスター製のハイエンド3Dサラウンドシステムを搭載するなど、やはり非の打ちどころはない。

実際にこのSL680モノグラム・シリーズのユーザーとなったのならば、移動は至福の時間となることは間違いないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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