ロータス・ヨーロッパではない「47」 正真正銘のレーシング・モデル

公開 : 2017.05.13 00:00  更新 : 2017.05.29 19:24

ともすればロータス・ヨーロッパを改造したレーシング・モデルと理解されそうな47ですが、実は完全なレーシング・モデルなのです。ボディ・シェルこそ、ヨーロッパ(46)と同じようなものを被されていますが、一旦ステアリングを握ってしまえば、その違いは明らかなようです。

重量わずか558kgのこのクルマは、最高出力177psながら誰の目にも速そうに見える。しかし、驚嘆すべきはサーベルのようにシャープなハンドリングである。ロータス47の走りに魅せられたジェームズ・エリオットは興奮気味にそう打ち明けた。

生産台数55台のレーシング・モデル

ロータスは慣習に囚われないメーカーである。公道走行に耐えるレーシング・モデルを作ったとしても、大半は開発過程における試作であり、量産モデルの性能をなんとか引き上げるのが狙いだ。ただ、生産化予定のないモデルについては、チャプマンは革命的なアプローチを採用する。エランのレーシング・バージョン、26Rもそのケースであるが、後に100台弱が生産され、幸運なプライベーターの手に渡った。

正確このうえないステアリングは、ミリ単位の精度でコーナーを攻略する。


続く後継車のヨーロッパに、ロン・ヒックマンはミドシップを採用。中でもロータス47は推定生産台数55台以下という希少モデルである。47は一見するとヨーロッパを穏やかにチューンナップしたモデルに見える。しかし、ボディの中身は別物だ。

当時の試乗レポートには、タイプ46のヨーロッパを公道用フォーミュラカーだとする記事が多く見られる。それは決してジャーナリストの大げさな美辞ではなく、単純に事実なのであった。

乗り手は神のごときコントロールに夢中になる。

ロータス・ヨーロッパとは別物

46と47は外見が似ており、どちらもエラン向けに考案されたバックボーン・シャシー(当初はロトフレックス・カップリングの実験台に過ぎなかったもの)を前後逆にして使っているが、共有部品はほとんどない。ヨーロッパS1は、ルノー16譲りの1.5ℓ4気筒を縦置きに搭載し、1966年に発表を迎える。

一方でタイプ47が選んだ高性能ツインカムは、レース用のストック・エンジンほど気難しい所がなく、177ps以上(インジェクション化で183ps)を発揮するうえ、性能面でも驚くほどの違いを生んだ。

タイプ46に搭載されたチューンド・ルノー・エンジン(83ps)は0-97km/h加速が9.3秒、最高速度が時速115マイル(185km/h)。ツインカムの47は、同加速タイムが5秒、最高速度は時速約165マイル(266km/h)に達する。

いずれも一体成型のFRPボディを纏うが、47のものはロードカーの46よりも薄く、軽い。これにより車重610kgと軽量なS1をフライ級の558kgまで減量した。

サスペンションにも同様の考えが反映され、同じシステム(前:改良型チャプマン・ストラット、後:テレスコピック・ダンパー/スプリングの全輪独立懸架)ながら、あらゆる点を改良している。

ヒンジ開閉式のウインドウ。FRP製のボディ・スキンも46よりも薄く軽量。

ロード・バージョンのヨーロッパS1は

しかし、296台のみ生産されたヨーロッパS1の前期(S1A)は、固定式シートにハメ殺しのウインドウ、ドア・ハンドルは省かれ、内装も最低限に絞るなど、レーシングカー顔負けのスパルタンな造りにしている。後期のヨーロッパS1(S1B、400台弱生産)と販売台数が比較的多いタイプ54 S2(3615台)では実用性を高め、パワー・ウインドウやスライド・シートなど、様々な快適装備を追加。

ヨーロッパの生産開始後5年を経て発表された「ツインカム」ことタイプ74(後にビッグ・バルブ・ヘッドを採用し「スペシャル」に)も同様に快適性が重視されている。こうした派生モデルは、1975年にエスプリが誕生するまで5,000台近くが販売され、最終的に0-97km/h加速を6.6秒まで短縮、最高速度を時速123マイル(198km/h)まで引き上げた。

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