フィアット500X 1.6マルチジェット・ポップスター

公開 : 2014.11.20 23:50  更新 : 2017.05.29 18:51

リアのドア・パネルこそ、コストを抑えた跡が露骨に残っているが、フロントのドア・パネルを含む、多くのモールディングには高級感がある。

シートのデザインや、メーターの視認性、ダッシュボード上のスイッチの押し心地、ステアリングの握り心地にも満足できるため、全般的にはとても魅力的だと言っていい。

ジープレネゲードのシートは高さ調整できるにもかかわらず、500Xの方がレネゲードよりも45mm低く座ること可能。それゆえにスポーティな印象もある。また室内のスペースは広く、SUVらしい見晴らしのよさも大きな魅力だ。

後部座席のシートはあまり柔らかくなくフラットな印象が強いが、足元のスペースはまずまずの余裕がある。小物入れなどの収納スペースも大きく、家族にもやさしいクルマだといえる。それでいてドライバーを退屈にさせないあたりはなかなかである。

テスト車両には、英国でもっとも売れると予想される120psの1.6ℓディーゼル・エンジンが組み合わされていた。0-100km/hタイムは10.5秒、複合サイクル燃費は24.7km/ℓ、CO2排出量は109g/kmというのがフィアットの公称値だ。

2000rpmよりも遥か下から強大なトルクが流れこんでくる点に関しては高く評価できるのだが、4000rpmあたりからエンジンが息切れし始めるのは受け入れがたい。しかしながら先代のマルチジェット・ディーゼル・エンジンよりは回転域は広がっているし、なめらかになったギアボックスのおかげで全般的に遅い印象はない。

それよりも気になるのはエンジンの洗練性。大音量というほどまでもないが、アクセルを踏めば ’ディーゼル音’ が明確に耳に届く。また高速巡航時にはウインド・ノイズが目立つうえ、特にリアのサスペンションがゴトゴトと音を立てることもあった。騒々しいとまでは言うつもりはないが、他のクルマのほうがもっと静かなのは間違いない。

ジープ・レネゲードと共有するプラットフォームの恩恵を受けて、大部分における乗り心地はとても素晴らしい。強固なストラクチャーと、リアのマクファーソン・ストラット式サスペンションによるところが大きいのだろう。荒い路面の上ではややボディの上下動が激しくなるが、多くの人が、多くのシチェーションで満足できるはずだ。

コーナーでの身のこなしも非常に軽やかである。アンダーステアに転じることはなく、十分なグリップと、控えめなボディ・ロールのおかげでクロスオーバーというよりも、小型車のようだと感じた。ESPがあからさまに介入してくることがないのも良い。

欠点は確かにあるものの、それを覆い隠す楽しさや、インテリアの出来栄えなどの仕掛けは数多に用意されていると感心した次第だ。

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