キャデラック エスカレード

公開 : 2012.11.20 18:11  更新 : 2022.03.24 21:24

キャデラックのSUV「エスカレード」の歴史はまだ13年程度。歴史を紐解けば長いものではない。が、その間にクルマの方は三代目へと進化し、ブランドの顔として成長した。そのことはアメリカに行くとよくわかる。多くのショーファーがリムジンからこのクルマへとスイッチしているだけでなく、パーソナルユースのドライバーも多い。今やオフィシャルに使えるフォーマルサルーンにして、スポーティなライフスタイルが醸せるラグジュアリー・ワゴンというのがエスカレードの立ち位置、そしてキャデラックの目指すキャラクターの方向性なのだろう。

ご存じの通り、代々のエスカレードの土台となっているのはシルバラード系のフルフレームシャシー。そこに架装される上屋も含めると、ユーコン系の派生車種とみてとることも出来る。が、GMT900のジェネレーションである現行モデルは、サスペンションやマウント類、制振遮音系など多岐に渡り専用のチューニングが施されるなど、中身は別物といっても過言ではないほど違えたものだ。内外装の仕立ての細やかさはハイエンドSUVとしてまずまず納得出来るレベルだが、GMジャパンが取り扱うようになったこのモデルから設定された上位グレードのプラチナムには、アニリン染めのレザーなど高級な素材もふんだんに用いられる。が、価格差を考慮すると個人的には標準グレードでも充分にキャデラックらしさを味わえる仕立てになっていると思った。ちなみに価格は標準仕様で849万円というから実質100万円近くの値下げだ。

搭載される6.2ℓのスモールブロックV8は、始動と共にアメ車らしくドスの効いたサウンドを響かせるも、回転のフィールはクリーミーでパワーの放たれ方も滲み出るように柔らかい。この弾性感のあるエンジンの特性と、始終ふわんと入力を受け止めてはすうっと流すシャシーとの相性は抜群。乗り味に於いては快適さや上質さの方向性を欧州勢とまったく異にしているが、それがまったくネガティブには思えない。むしろSUVのあるべき姿は異様な高速安定性よりも法定速度内での豊潤さにあるべきだろうということを、エスカレードは再認識させてくれる。

(文・渡辺敏史 写真・花村英典)

キャデラック エスカレード

価格 849万円
0-100km/h
最高速度
燃費 5.42km/ℓ
CO2排出量
車輌重量 2600kg
エンジン形式 V8OHV、6153cc
エンジン配置 フロント縦置き
駆動方式 後輪駆動
最高出力 409ps/5700rpm
最大トルク 57.4kg-m/4300rpm
馬力重量比 157ps/t
比出力 66.5ps/ℓ
圧縮比
変速機 6段A/T
全長 5155mm
全幅 2040mm
全高 1945mm
ホイールベース 2950mm
燃料タンク容量 98ℓ
荷室容量
サスペンション (前)ダブルウィッシュボーン
(後)4リンクリジット
ブレーキ (前)Vディスク
(後)Vディスク
標準タイヤサイズ P285/45R22 110H

記事に関わった人々

  • 渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。

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