巨体を突き動かす6.6L V8 ブリストル412 プロトタイプ(2) 量産仕様以上の主張 経営者へ似た豪快な性格

公開 : 2026.05.16 17:50

411と603のつなぎ役として誕生した、ザガート・デザインの412。四角いボディに6.6L V8エンジンを載せた、生産61台のオープンGTでした。その貴重な試作車と裏話へ、UK編集部が迫ります。

量産仕様以上の主張を放つプロトタイプ

ブリストル・カーズが、オープン・グランドツアラー市場へ挑んだ判断は、懸命なものだったと思う。経営を率いたトニー・クルック氏は、一定のニーズが有ると睨んでいた。

当時の英国には、ジェンセン・インターセプターやロールス・ロイス・コーニッシュといった、上級モデルが複数存在していた。クライスラー由来の6.6L V型8気筒エンジンを積んだ412にも、チャンスはあった。

ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様)
ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

今回のプロトタイプは、ボンネットの先端がより垂直に造形されており、量産仕様以上の主張を放つ。初期の提案から短縮されたといっても、全長は4940mmもある。オリジナルのデザインは、どんな姿だったのか興味も掻き立てられるが。

412用のボディは、ザガートの工場で98台か99台分が組み立てられ、塗装されてからブリストルへ届けられた。段差の付いたサイドの処理などへ、ランチア・ベータ・スパイダーランドローバーレンジローバーなどの影響を見て取れる。

1000時間の作業を経て塗装されたボディ

幾度もの転売を経て、プロトタイプの412をジェームズ・キャラダイン氏が購入したのは、2002年末。その時点で、ボディはレッドからブラックへ塗り替わっていたという。

彼は根っからのブリストル・マニアで、10代の頃、既に404を購入している。「その後に購入した405 ドロップヘッドクーペが、この412を入手するキッカケになりました。オーナーズクラブによる、南アフリカ・ツアーへの参加を理由に」

ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様)
ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

「ツアーへ向けて405のレストアを頼んだんですが、全然間に合わなかったんです。そこで、憧れていた412を急いで探しました。以来、素晴らしい時間を過ごしています」

「プロトタイプという点に惹かれたんです。2008年には、専門家のアンドリュー・ミッチェルさんへレストアを依頼しています。当初の状態は褒められたものではなく、約4年間、1000時間の作業を経てから塗装されました」。キャラダインが振り返る。

テーラードスーツの裏地のように派手な内装

412は、典型的な美しいフォルムではないかもしれない。しかし、クロームメッキのロールオーバーバーとエイボン・ホイールで飾った姿は、筆者を魅了する。ガンメタリックの塗装も、落ち着いていて好ましい。状態の良さが、陽光を受けて強調される。

インテリアは、いかにもブリストル。マスタード・イエローのレザーが、ボディと見事な対比を生む。シックなテーラードスーツの、裏地のように。前後の席へ大人2名がゆったり座れ、ルーフパネルとリアのソフトトップを開けば、一層優雅に過ごせる。

ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様)
ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ダッシュボードはクラシカルなデザインだが、ステアリングホイールはスポーティな3スポーク。ブリストルのロゴが、誇らしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・チャールズワース

    Simon Charlesworth

    英国編集部
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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