より明確な強みが欲しい 特別な車内と快適な走りは◎ DS 3 Eテンス・オペラへ試乗

公開 : 2024.02.09 19:05

市街地では充分活発 余裕が欲しい動力性能

ドライバーの正面には、小ぶりのモニター式メーターパネル。ヘッドアップ・ディスプレイも装備される。高効率なヒートポンプ式エアコンも標準だ。

試乗車は、車線維持支援や交通標識認識、衝突軽減ブレーキ、アダプティブ・クルーズコントロールなど、多彩な運転支援システムを実装していた。だが、車線維持支援は若干ふらつき気味。交通標識の読み取りは、マイル表示をkm表示と誤認しているようだった。

DS 3 Eテンス・オペラ(英国仕様)
DS 3 Eテンス・オペラ(英国仕様)

さて、3 Eテンスを発進させてみると、27.1kg-mの最大トルクを発揮する駆動用モーターは、市街地では充分活発。流れの速い郊外では、最高出力の156psをフルに発揮できる、スポーツ・モードを選択するのが良いだろう。

小改良で20ps向上したが、動力性能は競合の水準へ届いていない。プジョーe-2008など、ベーシック・ブランドには充分でも、プレミアム・ブランドなら余裕が欲しい。

ノーマルやエコ・モードの方が、低速域ではスムーズ。アクセルオフでの回生ブレーキを強める、Bモードもある。場面に応じて、モードを切り替えるのが良さそうだ。

回生ブレーキの効きが変わるのは、このBモードのみ。惰性走行やワンペダル・ドライブには対応していない。ブレーキペダルの感触は悪くないが、強めに踏むと回生ブレーキとの協調が遅れ、反応に僅かな変化が生まれる。

タイヤは、18インチで扁平率55のグッドイヤー。高効率でありながら、不足ないトラクションを発揮していた。

プレミアムとしてより明確な強みが欲しい

DSが強みとして掲げるのが、洗練された乗り心地と運転のしやすさ。ただし、バッテリーEVは全般的に静かで運転しやすい。ここで個性を出すことは、簡単ではない。

3 Eテンスには柔らかいスプリングが組まれ、舗装の古い一般道でサスペンションは柔軟に動く。スポーティに振られたライバルとは、一線を画す。

DS 3 Eテンス・オペラ(英国仕様)
DS 3 Eテンス・オペラ(英国仕様)

だが、隆起部分や舗装の剥がれた穴を通過すると、小さめの衝撃でその存在を教える。高速域では、ボディが僅かにソワソワと動く。ロードノイズも車内へ響きがち。より上質な印象を求めたいところではある。

ステアリングホイールは適度に軽く、反応は正確。良好な姿勢制御で、操縦性は褒められる。グリップ力は高めで、コーナリング中のボディロールは適度に抑えられている。確かに運転しやすい。

電費は、今回の平均で6.1km/kWh。航続距離は約320kmとなった。一般道での効率に優れ、高速道路に入らなければ370km前後は走れそうだ。

急速充電能力は、DCで最大100kW。残量10%から80%まで、最短30分で充電できる。11kWのAC充電器では、5時間半で満充電になる。

中国メーカーの欧州上陸で、電動クロスオーバーの競争は厳しさを増した。優れたブランド力を持つ、ボルボジープなども競合モデルを提供している。3 Eテンスのような高価格帯のモデルは、難しい戦いに迫られている。

今のところ、3 Eテンスにはクラス基準を満たす特長がある。だが、動力性能と車内空間は一歩届いていない。プレミアム・モデルとして、より明確な強みが欲しいところだ。

◯:運転のしやすさ 静かで快適な走り味 悪くない現実環境での電費
△:狭めのリアシート 高速域で落ち着きに欠ける乗り心地 アップデートを望みたい車載のデジタル技術

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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