実は「いすゞ」のツインカム! ロータスとキアの2代目エラン 3世代比較(1) 快適性と操縦性が真骨頂

公開 : 2024.03.09 17:45

乗り心地と操縦性の両立がロータスの真骨頂

これを叶えたのが、コンプライアンス・ラフト(インタラクティブ・ウィッシュボーン)と呼ばれる設計のフロント・サスペンション。ロワー・ウイッシュボーンは、ラバーマウントを介してシャシーから分離された、クロスメンバーへ固定されている。

このクロスメンバーは、前後の動きを許容する一方、左右方向の動きは抑えられている。これにより、スムーズなパワー展開を可能としたのだ。

ロータス・エラン SE(S1/1989〜1992年/英国仕様)
ロータス・エラン SE(S1/1989〜1992年/英国仕様)

静止状態からフルスロットルで加速する場面では、ステアリングホイールの感触が変化し、フロントタイヤがむずがる様子がわかる。しかし、FRのスポーツカーで生じる影響と、大きな違いはない程度。FFの抱える課題を、M100は見事に解決している。

ドライビング体験で輝くのは、旋回時の姿勢制御。しなやかな乗り心地を考えると、感服させられる。67:33という、ノーズヘビーも感じさせない。

残りの2台も同様だが、フロントタイヤのグリップは極めて高く、操舵へ好バランスに反応。精力的にボディを牽引していく。鋭敏なコーナリングには、中毒性すら伴う。

この乗り心地と操縦性の両立こそ、ロータスの真骨頂。多くの企業が、助言を求めてグレートブリテン島の東部、へセルを訪れた理由でもある。

販売の足を引っ張った高めの価格

傷んだアスファルトも、その他大勢のスポーツカーでは不可能に思えるマナーで、滑らかに処理していく。ある程度の硬さはあるものの、不快な衝撃が伝わるのは、短めのスプリング・ストロークが限界に達する場面のみ。その時初めて、ボディも僅かに震える。

筆者が弱点を挙げるなら、少々薄味のステアリングフィール。最高のモデルのように、フロントタイヤと密なコミュニケーションは取れない。それでも、初代MX-5より優れていることは明らかだ。

ロータス・エラン SE(S1/1989〜1992年/英国仕様)
ロータス・エラン SE(S1/1989〜1992年/英国仕様)

これほど好印象な体験を与える、エランの足を引っ張ったのが価格。MX-5だけでなく、TVR S3などと比べても、明らかに高価だった。洗練性では圧倒したとしても。英国では5000ポンド以上の違いがあり、北米市場ではさらにその差は広がった。

1990年代初頭には、景気も悪化。ロータスの設定した目標販売数には、英国市場を除いて届かず、3年間にラインオフしたのは3855台。当初は10年間の提供をGMは計画していたものの、ロータスの売却よりひと足早く、1992年に生産停止が決まった。

「ロータスの売却に関しては、新体制に対してある程度の政治的な駆け引きがありました」。と振り返るのは、M100のスタイリングを手掛けた、デザイナーのピーター・スティーブンス氏だ。

「コストダウンさせたクーペを製作し、実現可能であることを取締役会に提案しています」。オペル・カリブラのヘッドライトとテールライトが与えられる予定だったが、結局は実現していない。

この続きは、ロータスとキアの2代目エラン 3世代比較(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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