夢、潰える 米新興EV「フィスカー」が破産 資金調達に失敗、資産売却へ

公開 : 2024.06.19 18:45

米国の新興EVメーカー、フィスカーが破産を申請した。SUV「オーシャン」をはじめ複数のモデル投入を計画していたが、 “大手メーカー” との提携交渉が決裂、事業継続の見通しが立たなくなった。

大手メーカーと提携交渉が決裂 資金調達できず

米国の新興EVメーカーであるフィスカー(Fisker)が破産した。欧米で中型SUVの「オーシャン」を販売し、他にもピックアップトラックなど新型車の投入を控えていたが、資金調達に失敗し事業継続の道を絶たれた。

同社の事業部門であるフィスカー・グループは6月17日、米連邦破産法第11条(日本の民事再生法に相当)の適用を裁判所に申請した。

フィスカー・オーシャンは今年3月に「ほぼ半額」の大幅値引きを実施した。
フィスカー・オーシャンは今年3月に「ほぼ半額」の大幅値引きを実施した。

フィスカーは2023年第4四半期に4億6360万ドルの損失を計上し、今年2月に事業継続性に懸念を示した。3月にはオーシャンの生産を一時停止し、小型ハッチバック「ピア」の開発も中止。「大手自動車メーカー」との提携を模索していた

この大手メーカーとは日産自動車のことではないかという噂もあったが、結局交渉は決裂した。提携が成立していれば、フィスカーのEV専用プラットフォームと引き換えに、4億ドルの現金を受け取るはずだった。

フィスカーは交渉終了後、迅速な資金調達のためにオーシャンの在庫分の価格を引き下げた。

今後は債権者への返済計画の策定に取り組む。同社は破産申請の一環として、資産総額が5億ドルから10億ドル、負債総額が1億ドルから5億ドルと申告している。

フィスカーは声明で、資金調達と資産売却について「話し合いを進めている」と述べた。

「当社は、北米と欧州で何千台ものフィスカー・オーシャンをお客様の手に届けてきた実績を誇りに思う。しかし、EV業界の他の企業と同様に、さまざまな市場やマクロ経済の逆風に直面し、効率的な事業運営能力に影響を受けてきた」

「事業のあらゆる選択肢を検討した結果、連邦破産法第11条の下で資産の売却を進めることが、当社にとって最も現実的な道であると判断した」

オーシャンの生産はオーストリアのマグナ・シュタイヤー社に委託していた。

フィスカーは、従業員の賃金や取引先への支払い、「特定の顧客プログラム」の提供は継続すると述べている。ただし、無線ソフトウェアアップデートなどどのようなプログラムが維持されるかはまだ明確になっていない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事