主役の座を奪った兄弟の328 フレイザー・ナッシュBMW 319(1) 影になった1.9L直6エンジンとキドニーグリル
公開 : 2026.07.04 17:45
英国のフレイザー・ナッシュがライセンス生産した、BMW 319。繊細で可憐な佇まいの容姿に、シャシー性能を最大限に引き出す1.9L直6エンジン。父から乗り継がれる1台を、UK編集部がご紹介。
もくじ
ー主役の座を明らかに奪われたBMW 319
ー英国の工場でライセンス生産されたBMW
ーミッレミリアで脚光を浴びた328の魅力に通じる
ー1939年前後にギブソン兄弟が中古車で購入
ー「BMWのことを、もっと父へ確認しておくべきでした」
主役の座を明らかに奪われたBMW 319
BMWを振り返ると、多くの名車が兄弟モデルの影になって来た。2002 tiiは2002 ターボに、E28型535iはM5に、話題をさらわれた。E30型325iも、M3の存在感へ霞んだ。
いずれも素晴らしいクルマだったが、正当な評価は得られなかったといっていい。しかし筆者が把握している限り、戦前のBMW 319、今回の例ではフレイザー・ナッシュBMW 319ほど、主役の座を明らかに奪われた例はないように思う。

この319は、1933年に発売されたBMW 303の進化版で、ニュルブルクリンクやミッレミリアで活躍した328より先に誕生している。ドイツ南西部、ミュンヘンで初めて量産された直列6気筒エンジンを搭載し、フロントには縦に長いキドニーグリルが備わった。
英国の工場でライセンス生産されたBMW
遡ること1934年。アーチボルド・フレイザー・ナッシュ(AFN)社を率いたHJ・アルディントン氏は、自社モデルがアルパイン・トライアルの1500cc以下クラスで活躍すると期待していた。前年には、同社のTTレプリカがペナルティゼロの記録を残していた。
ところが同年に躍進したのは、1.5L直6エンジンを積み、独立懸架式サスペンションとラック&ピニオン式ステアリングを採用したBMW 315。319の前身だった。

アルディントンは速さに感銘を受け、BMWの輸入代理店になるだけでなく、自社工場でのライセンス生産を希望。フレイザー・ナッシュBMWとして、そのモデルを英国で展開する権利も与えられた。自社ブランドの名が先に置かれるという、有利な内容で。
ナチス政権がドイツで台頭した当時、BMWを強調すると販売が制限される恐れがあったことが、その理由だとされている。英国製だと、強調する意味も強かったはず。
ミッレミリアで脚光を浴びた328の魅力に通じる
とはいえ、AFN側は右ハンドル仕様の部品をドイツから一式輸入。英国の工場では、純粋に完成車として組み立てられるだけだった。記録によれば、1934年に315の生産がスタート。その後、1.9Lエンジンの319へ改良されている。
315や319のサルーンやカブリオレは、AFNから600台以上が提供されている。対して、今回の例のようなオープン2シーターは、315 スポーツで16台。319 スポーツは26台と少なかった。残存数は、合わせて24台ほどだという。

設計に優れた319だが、技術が革新的だったわけではない。独立懸架式のフロントサスペンションやラック&ピニオン式ステアリングは、モーガンが第一次世界大戦前から採用していた。排気量の小さい6気筒エンジンも、珍しくはなかった。
それらを巧みに融合させ、軽く美しく仕上げた点がBMWのアドバンテージといえた。敏捷なだけでなく、快適に運転できた。1940年のミッレミリアで脚光を浴びる、460台がラインオフした328の魅力にも通じていた。







































































































