ブランド回復までの長い道のり フィアットを救ったオリヴィエ・フランソワ氏:エディターズ賞(前編) #AUTOCARアワード2026

公開 : 2026.07.03 18:05

フィアットのCEOを務めるオリヴィエ・フランソワ氏は、得意とするマーケティングを駆使してさまざまなブランドで結果を残してきました。その功績をが評価され、AUTOCARアワードでエディターズ賞を受賞しました。

音楽業界とのつながりも深い人物

いくつもの大きな誤解や、解任の危機がなければ、オリヴィエ・フランソワ氏がフィアットのCEOになることは決してなかっただろう。

フランス人のフランソワ氏は、現在ではマーケティングの専門家として名高いが、自動車業界に足を踏み入れた当初、マーケティングについてほとんど知識がなかったことを認めている。自動車そのものについても、本当の意味では理解していなかったという。

フィアットのオリヴィエ・フランソワCEO
フィアットのオリヴィエ・フランソワCEO

彼が情熱を注いでいたのは音楽だった。イタリアのポップスター、アリアナ・ベルガマスキと結婚し、レゲエ界のレジェンドであるシャギーとは親しい友人関係にあり、バチカン市国で史上初のコンサートの企画を手伝った人物でもある。特筆すべき経歴の持ち主だ。かつては上司たちに隠していたが、今では自身の詩集を出版したことも明かしている。

しかし、並外れた意志力と、不利な状況でも最善を尽くす才覚によって、彼は自動車業界の頂点へと這い上がってきた。

米『ブルームバーグ』はかつてフランソワ氏を「クライスラーのドン・ドレイパー」と呼んだ(翻訳者注釈:ドン・ドレイパーはテレビドラマ『マッドメン』の主人公)。そして今日、彼は、数十年にわたり存続の危機に瀕していたフィアットを健全な状態へと立て直した功績により、AUTOCARの2026年エディターズ賞(自社の成功に最も大きな影響を与えた個人に贈られるアワード)を受賞した。

グランデ・パンダは15年前から構想

フィアットは、ここ数十年で最も強力な製品ラインナップを揃え、ついに欧州で成長軌道に戻りつつある。『グランデ・パンダ』は、まるで水からワインを作り出すようなもので、質素なオペル/ヴォグゾール・フロンテラをベースにしながら、はるかに魅力的なクルマへと変貌させた。『500』には、待望のガソリンエンジンがようやく復活した。そして、目立たないティーポに代わる、パンダをモチーフにした2台の新型ファミリーカー『グリズリー』が発売を控えている。

しかし、フィアットの不死鳥のごとき復活劇は、決して突然の出来事というわけではない。フランソワ氏は2011年、セルジオ・マルキオンネ氏の要請により同ブランドのCEOに任命された。

フィアット・グランデ・パンダ
フィアット・グランデ・パンダ

フランソワ氏は、指揮を執り始めて最初の数週間で、伝説的なまでに厳格なマルキオンネ氏(後のFCAトップ)に提示したスライド資料をこう振り返る。

「セルジオにこう言いました。『あのクルマは作るべきではないと思います。これとあれを作るべきです』と。当時のラインナップ全体が、今でもわたしの古いパソコンに残っています。その1つは、15年前のグランデ・パンダのようなものでした。あなたもきっと『なるほど!』と思うはずです」

しかし、彼が実際にこれらの計画を実行に移すためのリソースを手に入れたのは、2021年にFCAがPSAと合併してステランティスを結成してからのことだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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