繊細で可憐な佇まい フレイザー・ナッシュBMW 319(2) シャシー性能を最大限に引き出す動力源 快適さの中で叶えた敏捷性

公開 : 2026.07.04 17:50

英国のフレイザー・ナッシュがライセンス生産した、BMW 319。繊細で可憐な佇まいの容姿に、シャシー性能を最大限に引き出す1.9L直6エンジン。父から乗り継がれる1台を、UK編集部がご紹介。

1年弱をかけてリビルドされた直6エンジン

2023年に、ジェレミー・ギブソン氏は父のフレイザー・ナッシュBMW 319を再び捜索し始める。「偶然、インターネットでスコットランドのヒルクライム・レースを走る写真を目にしたんです」

デニス・ジェンキンソン氏が記したAFN社の歴史書が、彼の思いを強めることに繋がった。その中には、前オーナーのヴォルフガング・シュルンダー氏の訃報と、親族の住所が載っていた。319はその1人、ヴォルフガング・クリンケ氏が受け継いでいた。

フレイザー・ナッシュBMW 319(1936年式/英国仕様)
フレイザー・ナッシュBMW 319(1936年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

彼は直ぐに連絡を取り、購入したい旨を伝達。ASC 131のナンバーを下げた319は、2024年4月にグレートブリテン島へ再上陸を果たした。同年8月には、ビンテージカーのイベントで、BMWヒストリック・モータークラブのブースに展示されている。

ところが、その帰路でエンジンブロー。専門家のサイモン・ブレイクニー・エドワーズ氏を頼り、1年弱をかけてリビルドされた。

繊細で可憐な趣がある319の佇まい

今回の取材に当たり、筆者がギブソンと待ち合わせしたのは、グレートブリテン島南西部に位置するチェダー渓谷。この近くのガレージに、保管されているのだという。あいにく朝は氷点下へ冷え込んでいたが、微塵も嫌がらずに運転して来ていただいた。

谷間に佇む319は、実に美しい。BMW 328も美しいが、繊細で可憐な趣がある。

フレイザー・ナッシュBMW 319(1936年式/英国仕様)
フレイザー・ナッシュBMW 319(1936年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

オリジナルと違う部分は2つあり、1つ目はボルボ・アマゾン用のMTへ換装されていること。戦前のモデルでは珍しくないアップグレードで、ダブルクラッチを踏まずに素早く変速できる。オリジナルのMTは保管され、簡単に戻せるという。

2つ目は、ソレックス・キャブレターがトリプルではなくツインなこと。3基並んでいた方が最高出力は僅かに高まるが、調整は難しくなる。1.9L直列6気筒エンジンは好調に回り、2基でもオリジナルの55ps以上の馬力が出ているそうだ。

特別な慣れも必要なく普通に運転できる

運転席へ身体を収めると、身長190cmでも望ましい運転姿勢を取れることに感心する。「好きなだけ乗って構いませんよ。耳で聞いて必要な時に変速して、思い切り楽しんでください」と、ギブソンが寛大に話す。

ダッシュボードのレイアウトは、戦前と思えないほど現代的。ヴェイゲル社製のタコメーターは5000rpm、スピードメーターは時速100マイル(約161km/h)まで振られている。燃料と油圧、水温も確認しやすい。

フレイザー・ナッシュBMW 319(1936年式/英国仕様)
フレイザー・ナッシュBMW 319(1936年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

キーを回し、スターターのボタンを押せば、直6エンジンは即座に始動。予想より低いサウンドが、鼓膜を震わせる。90年前のモデルでありながら、特別な慣れも必要なく、普通に運転できる。これは、実はかなり稀有なことだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フレイザー・ナッシュBMW 319の前後関係

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