15年間温めてきたアイデア フィアットを救ったオリヴィエ・フランソワ氏:エディターズ賞(後編) #AUTOCARアワード2026
公開 : 2026.07.03 18:10
フィアットのCEOを務めるオリヴィエ・フランソワ氏は、得意とするマーケティングを駆使してさまざまなブランドで結果を残してきました。その功績が評価され、AUTOCARアワードでエディターズ賞を受賞しました。
ランチアブランドの存続をかけて
崖っぷちのランチアブランドのCEOに任命されたオリヴィエ・フランソワ氏は、すぐに窮地に立たされた。
「『新型デルタ・インテグラーレと新型ストラトスを作ります。その方法をお見せします』と言って役員会に乗り込んだのですが、上司たちはまったく感心しませんでした」

またしても解雇の危機に瀕したこの時のことを、彼は笑顔で振り返る。
「どのブランドのCEOも、ある程度の『大言壮語』をしなければなりません。なぜなら、CEOはブランドの代弁者であり、ブランドをポジティブな光で照らし出さなければならないからです。しかし、聴き手を完全に騙すことはできません。彼らもビジネスのプロですから。わたしは客観的に見てリスクの高いことを主張していました。結果は散々でしたよ」
その後の見直しを経て、過去10年間でわたし達が知るランチアが誕生した。フィアット車のボディをスタイリッシュに一新したモデル(500をベースにしたイプシロンや、ブラーボをベースにしたデルタ)に加え、FCAの設立後には、クライスラーのリバッジモデルもいくつか展開した。確かに、ランチアは20世紀を通じて輝きを失ってしまいましたが、それでもなお存続している。
ブランドCEOとしての最低限の使命
「わたしは誤解していたんです」とフランソワ氏は言う。
「セルジオがわたしに、何十億も投じてランチアのかつての栄光を取り戻すことを期待しているのだと思っていました。ストラトスやデルタ・インテグラーレを復活させた人物として、わたしの名が後世に残ることは決してありません。ブランドを潰したといって賞をもらえるわけでもない。ブランドを率いる以上、最低限やるべきことは『ブランドを潰さない』ことです。しかし、わたしの場合は、そのブランドが消える運命にあったのです」

ランチアを救った後、マルキオンネ氏はフランソワ氏にクライスラーの立て直しを任せた。そのラインナップに残っていたのは、旧式化したセブリングだけだった。クロスファイアは生産終了したばかりで、PTクルーザーも生産終了間近。アスペン(先進的なハイブリッドパワートレインを搭載した大型SUV)は「完全に死んでいた」し、300Cも生産休止の瀬戸際にあった。
手元にはわずか6400万ドルしかなかったが、「2000万ドルをスーパーボウルのCMに、4400万ドルをセブリングのデザイン刷新に投じた」という。そして、セブリングの名称を『200』に変更した。その結果、セブリングの最終年と200の初年度の間で、販売台数は6000%――そう、6000%――も増加した。一方、ラッパーのエミネムが出演したCMはエミー賞を受賞した。



































