フェラーリ・ローマ・スパイダー 275 GTS 比較試乗(2) 史上最高なV12サウンド クーペの選択へ疑問?

公開 : 2024.10.05 09:46

ローマ・スパイダーの源流にあるフェラーリが、275 GTS 60年前なら衝撃的だった動力性能 芸術と表現したい女性的で魅惑的なボディ コンバーチブル 2台の魅力を英編集部が探る

クーペを選ぶ理由に疑問が湧くソフトトップ

フェラーリ・ディーノ206 GTは1967年に登場していたが、365 GTS/4「デイトナ」スパイダーの生産が1973年に終了すると、コンバーチブルもミドシップへ。308 GTSにモンディアル・カブリオレ、348 GTS、355 GTSとスパイダーを経て、F50が続いた。

フロントエンジンでは、2000年の550 バルケッタ・ピニンファリーナを挟み、2008年に発売されたのがカリフォルニア。6年後にカリフォルニア Tへ更新され、ポルトフィーノに交代している。800psの812 GTSも、忘れてはならない1台だ。

フェラーリ・ローマ・スパイダー(欧州仕様)
フェラーリ・ローマ・スパイダー(欧州仕様)

歴史的な確認が長くなったが、ローマ・スパイダーの運転席を観察してみよう。車載機能のインターフェイスのほぼすべてが、カーボンファイバーとレザーで仕立てられたステアリングホイール上と、その周囲にレイアウトされている。

レッドに染められた「マネッティーノ」ドライブモード・セレクターから、各スイッチまで、すべて直感的な場所にある。作り込みは美しく、人間工学的にも素晴らしい。ただし、もう少しデザインには高級感があって良いだろう。

ソフトトップを閉めると、ハードトップに迫る水準で防音性が高い。もちろん、隙間風が吹き込むことはない。シート後方のウインドディフレクターが有能で、オープン状態でも感心するほど車内は居心地が良い。クーペを選ぶ理由に、疑問が湧くほど。

動力性能は、620psへの期待通り。275 GTSとは異なる、フラットプレーン・クランクユニットらしいV型8気筒サウンドが、耳へ直接届く。8速デュアルクラッチATにも、批判するような部分はまったくない。

理想像な3ペダルとオープンゲートMT

とはいえ、275 GTSの体験は極上。フェラーリを専門に扱うカーディーラー、ジョーマカリ社が特別な顧客から仕入れたという1965年式で、フェラーリ・クラシケの認証も受けている。

しばらく放置されていたらしく、オーバーホールが控えているそうだが、走りは活発。容姿は素晴らしいのひとことだ。ローマ・スパイダーに乗って、275 GTSを追走していると、その小ささに改めて驚かされた。

フェラーリ275 GTS (1964〜1966年/欧州仕様)
フェラーリ275 GTS (1964〜1966年/欧州仕様)

キーを回し、トリプル・ウェーバーキャブレターへガソリンが送られるのを待つ。勇ましい轟音とともに、V型12気筒エンジンが目覚める。咳き込むように回転数を上下させ、落ち着いたアイドリングが始まる。

やはり、3ペダルのオープンゲート・マニュアルが、筆者にとってフェラーリの理想像。初秋のイタリアのワインディングをすり抜け、湖畔に佇む小洒落たトラットリアの壁へ、クラシカルなサウンドを反響させたい。完璧なドライブを想像してしまう。

1960年代のイタリア車として考えれば、運転姿勢は自然。すべての操作系が、届きやすい場所にある。

前方視界で存在感を示すのは、3スポークのナルディ・ステアリングホイール。その奥に、300km/hまで振られたスピードと、7000rpmでレッドラインのタコ、2枚の補機メーターが並ぶ。4枚がシフトレバーの前にも。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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