偶然目にした写真がすべての始まり イソ・グリフォ(2) 貯金をはたいたコダワリのレストア
公開 : 2025.01.26 17:46
プロの職人に匹敵する仕上がりを達成
「ボンネットを持ち上げるトーションバーは、計算して再製作しました。グリフォのボンネットは、勢いよく開くか、まったく持ち上がらないかのどちらかです。でも、これはスムーズに開くんですよ」
細部へのコダワリは、イソ・マニアの助けにも繋がった。アイロン台に用いられる素材とフォーム材を高温の接着剤で合わせ、パターンを再現したボンネット裏の断熱材を、彼は自ら開発した。最近は、他のグリフォ・オーナーのために製作しているそうだ。

エンブレムも同様。彼の息子づてで、グレートブリテン島中部、バーミンガムのとある企業へ接触。「Iso MILANO」と記された四角いエンブレムの再生産を叶えた。既に76枚が、現存するイソのボディを飾っている。
ワイヤーハーネスやメーターの修理にも、相応の時間が必要だった。グリフォが公道を走れるようになったのは、2023年のことだった。
翌2024年に、クラシックカーのイベントへ参加。当然のように、多くの賞が与えられた。ロンドン・コンクールでは、AUTOCARの姉妹メディアが贈る、クラシック&スポーツカー・エディターズアワードも受賞している。
偶然目にした写真に魅せられたウォルファーズは、最終的にプロのレストア職人へ匹敵する仕上がりを達成させた。些細な不一致はあるかもしれないが、彼のグリフォは見る者を惹き込む、不思議な雰囲気を醸し出している。
インテリアも極めて美しい。果たして本当に走るのか、不安になるほど。
見る者を魅了することへ疑問の余地はない
発進させれば、容姿にそぐわず運転体験も素晴らしい。エキゾチックなV12エンジンを積んではいないが、満たされない何かが感じられるわけでもない。
アクセルペダルを軽く傾けると、スモールブロックのV8エンジンが勇ましくパワーを放出する。コルベット由来のユニットらしく、少し不機嫌そうに回転する。注意深く扱うこともできるし、奔放に轟音を撒き散らすこともできる。

シフトレバーは正確にゲートを選べ、感触が心地良い。クラッチペダルは重めながら、足が疲れるほどではない。加速時には身震いを伴うが、大胆な振る舞いが嫌いでなければ、気になる部分ではないだろう。
トルクは太く、その気になれば息を呑むほど速い。3速で引っ張ると、160km/hを超える。クラシックカーイベント、ル・マン・クラシックさながらの音響体験に包まれる。
1960年代の少量生産モデルではあるが、イソやジオット・ビッツァリーニ氏の技術力には唸らされる。リア・サスペンションは、ド・ディオンアクスル。低い重心で安定性は高く、高速域でも自信が揺らぐことはない。
タイトコーナーだけでなく、100km/h程度で巡る高速コーナーでも安心感がある。ブレーキも、速度を気にする必要がないほど効く。乗り心地も素晴らしい。全体の操縦性にもまとまりがある。後方には、+2のリアシートが備わる。
ドライバーを満たす、才色兼備のグランドツアラー。グリフォが今でも少なくない人を魅了することへ、疑問の余地はないだろう。
イソ・グリフォ GL(1965〜1974年/英国仕様)
英国価格:5950ポンド(新車時)/50万ポンド(約9750万円/現在)以下
生産数:413台(合計)
全長:4430mm
全幅:1770mm
全高:1200mm
最高速度:257km/h
0-97km/h加速:6.2秒
燃費:5.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1450kg
パワートレイン:V型8気筒5354cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:355ps/5000rpm
最大トルク:49.6kg-m/4000rpm
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)