【新型ルークスで挑戦】日産が真剣に研究する『酔いにくいクルマ』とは?4つの角度から影響因子を抑え込む!

公開 : 2025.12.25 12:05

10月から発売された日産の新型軽乗用車『ルークス』は、セレナの開発で得たメカニズムを元に、『酔いにくいクルマ』を目指しています。具体的には4つの角度から影響因子を抑え込むそうです。篠原政明がレポートします。

現行セレナから開発を進める『酔いにくいクルマ』

筆者の周囲では最近少なくなったようにも思えるが、『クルマ酔い』しやすい人はけっこういる。小学生のころ(もう何十年も前だが)、遠足などでバスに長時間乗るとクルマ酔いする友人が何人もいたものだ。

クルマ酔いは、不規則な揺れや加減速で目から入る視覚的な情報と平衡感覚をつかさどる三半規管からの情報の処理にズレが生じてしまい、めまいや吐き気を催すものだ。ほかにも臭いや温度、湿度なども関係してくると言われている。

10月から発売された新型日産ルークス。
10月から発売された新型日産ルークス。    平井大介

日産では、2022年に発表されたミニバンのセレナから『酔いにくいクルマ』を目指して開発している。そして、今回の新型軽乗用車『日産ルークス』でも、セレナで確立した酔いにくさのメカニズムを基に、4つの角度からその影響因子を抑え込むことで『酔いにくいクルマ』へ進化させたという。

クルマそのものの揺れや振動を抑制

まず、ひとつめは『体性感覚』。簡単に言えば、不快なクルマの揺れや頭の揺れだ。

これはもちろんドライバーの技量(ドライビングテクニックというほどではないが、操作するスムーズさなど)も影響するが、クルマそのものの揺れや振動を抑制し、身体や頭が揺れることも抑制することを目指す。

背骨の負担を軽減したゼログラビティシートを、フロントだけでなくリアシートにも採用。
背骨の負担を軽減したゼログラビティシートを、フロントだけでなくリアシートにも採用。    平井大介

そのために、背もたれパッドを中折れ(スパイナルサポート)形状にして、重量のある胸郭と骨盤を積極的に支えて背骨の負担を軽減したゼログラビティシートを、フロントシートだけでなくリアシートにも採用。特にリアシートは肩甲骨まわりの接触面を拡大したバック形状で、カーブなどで身体を揺れにくくしている。

そして高応答性のショックアブソーバーや前後方向の硬さを抑えたサスペンションのゴムブッシュなどにより、反応が良く段差乗り越え時のショックを少なくして、クルマそのものを揺れにくくしている。

『酔いにくいクルマ』へと進化させるためには

ふたつめは『臭覚』、つまり車内の不快な臭いだ。これには、プラズマクラスターやリアのシーリングファンを採用して、車内の換気を良くすることで臭い物質の低減を図る。

それでも、新車の接着剤の臭いなどもけっこう気になる人はいる。さらに喫煙者のクルマでは、タバコの臭いも。

段差乗り越え時のショックを少なくして、クルマそのものを揺れにくくしている。
段差乗り越え時のショックを少なくして、クルマそのものを揺れにくくしている。    平井大介

つまり、この要素はクルマ自体だけでなく同乗者のにおいなども要因となるから、多人数でクルマに乗る時はお互いに気をつけたい部分でもあるのだが……。

3つめは『ストレス』。といっても個人の心理的要因ではなく、身体への締め付けや圧迫だ。

これには、前述のゼログラビティシートで体圧を分散したり、リアシーリングファンで車内の温度を前後シートで変わらないよう適正に保つといったことで対応。また、スーパーハイトワゴンならではのヘッド&フットスペースの広さで、圧迫感から解放されることでストレスに対応する効果もあるという。

そして4つめは『視覚刺激』。特に後席では視界が制限されると、見える情報とクルマの揺れの関係で酔いやすくなる。

そこで、フロントウインドウを大きくし、リアシートの着座位置を高めにして左右はもちろん前方も外が見通せるようにし、またインパネのディスプレイも後席からの視界を遮らないように配置している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    篠原政明

    Masaaki Shinohara

    1958年生まれ。某自動車雑誌出版社をめでたく? 卒業し、フリーランスのライター&エディターに。この業界に永くいるおかげで、現在は消滅したものを含めて、日本に導入されている全ブランドのクルマに乗ってきた……はず。クルマ以外の乗りものもけっこう好きで、飛行機や鉄道、さらには軍事モノにも興味があるらしい。RJC会員。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

日産&三菱の軽スーパーハイトワゴン、フルモデルチェンジ祭り!の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事