偶然目にした写真がすべての始まり イソ・グリフォ(2) 貯金をはたいたコダワリのレストア

公開 : 2025.01.26 17:46

イタリアの今はなきイソの遺作、グリフォ スタイリングはジウジアーロ シャシーはビッツァリーニ エンジンはコルベット用V8 オーナー拘りのフルレストア 貴重な1台を英編集部が深掘り

貯金が尽き、熱意は徐々に冷めていった

ピーター・ウォルファーズ氏は、1990年代半ばまでに資金を準備。レストアを得意とするワイモンダム・エンジニアリング社へ、イソ・グリフォの作業を依頼する。サビの修復に必要な金額は、最高でも1万ポンド程度だと見積もられていたらしい。

しかし、完了時に示された請求額は3万ポンド。高水準な仕事と、イタリアをくまなく探しても新しいボディパネルの入手が不可能だったことを考えると、彼は妥当な金額に受け止めたという。

イソ・グリフォ GL(1965〜1974年/英国仕様)
イソ・グリフォ GL(1965〜1974年/英国仕様)

「充分に価値のある支出といえました。サビは完全に切除され、綺麗に復元されていましたからね。荷室の床面やフェンダー裏のボックス部分、ホイールアーチなどは新調されています」

「フェンダーやフロントノーズは、英国製の成形用ホイールで仕上げられています。イタリアのイソを専門とするネグリ社を訪ね、提供できる部品を調べましたが、余りにも高額で深く追うことはやめたんです。協力的なスタッフとは、友人になりましたが」

残るレストアの完了には、長い年月が必要になった。仕事の出張でアメリカ・カリフォルニアへ出向く度に、ウォルファーズはアルミ製シリンダーヘッドなどを手荷物で持ち帰った。しかし貯金は尽き、熱意は徐々に冷めていった。

「2012年に、このままではこのクルマを運転できないだろうと気付いたんです。できる部分から手を付け、作業を進め、2017年にマス・レーシング社へエンジンのリビルドを依頼しました」

順調には進まなかったコダワリのレストア

軽量なアルミ製ヘッドと、無鉛ガソリンでも快調を保つアップデート以外、V8エンジンはオリジナルに準じた355ps仕様へ再生。ホーリー社製の4バレル・キャブレターは新品に交換され、点火系も更新。チョーク機構は省かれた。

ボディシェルの塗装は、2人の職人を介することとなった。ウォルファーズが最初に頼った人物は、作業の途中でワークショップの差し押さえに陥り、預けていた部品も接収。4週間をかけて、自分で回収したという。

イソ・グリフォ GL(1965〜1974年/英国仕様)
イソ・グリフォ GL(1965〜1974年/英国仕様)

「仮組みするものはすべて揃っていて、念のため部品を写真に撮っていました。おかげで、5点を除いて殆どが見つかったんですよ。側面のグリル用フィンは、開口部の形状に合わせて作られています。これは、食器用洗剤の箱に隠されていました」

次に連絡を取ったのは、グレートブリテン島東部、ケンブリッジの専門家。アンダーシール加工が施され、新車時以上の保護性能が与えられた。

内装も、得意とする職人を頼った。「5か月で終わる予定が、3年半もかかりました。完璧に仕上げるためには、長い時間が必要だったんです。人生と同じですよ」

それまでの間、戻ってきたボディシェルを相手に、ウォルファーズはサスペンションと電気系統に取り掛かった。「スイッチ類はすべて分解し、接点をクリーニング。パワーウインドウのモーターやワインダー、ドアキャッチも同じように作業しています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ナイジェル・ブースマン

    Nigel Boothman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

イソ・グリフォの前後関係

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