運転を楽しめる非日常 メルセデス・ベンツ420SL ヨークシャーを巡る(2) 究極的で現実的
公開 : 2025.04.06 17:46
ヨークシャー地方で提唱される新たなドライブルート「YC」 最後まで先進性が保たれたR107型SL 日常から遠くない場所の、運転を楽しめる非日常 英編集部が3日間で魅力を探る
もくじ
ー高域へ積極的に吹け上がる4.2L V8エンジン
ー運転へ没頭するには早起きが間違いない
ー日常から遠くない場所の、運転を楽しめる非日常
ー究極的で現実的なクラシック・スポーツカー
ーメルセデス・ベンツ420SL(R107/1971〜1989年/英国仕様)のスペック
高域へ積極的に吹け上がる4.2L V8エンジン
メルセデス・ベンツ420SLとともに2日目の半分を過ごした頃、4.2L V8エンジンを活かし切る方法があることへ気が付いた。4速ATには「S」と記されたスイッチがあるのだが、勘違いしていたのだ。
Sが見えた状態では、エコノミー・モードになるらしい。アクセルペダルを深く傾けてもキックダウンに消極的で、エンジンは排気量が半分しかないように控え目な仕事をする。だがスタンダード・モードなら、足かせが外れる。

中域でのトルクも印象的だが、高域へ積極的に吹け上がる仕草が爽快。このM116ユニットはSクラス用として開発され、多くは運転手付きのサルーンに積まれてきた。その場合、シフトセレクターはPとD、Rを行き来しただけだろう。
右足へ力を込めれば、音響も豊かになる。レバーを手前へ倒し、2速でしっかり回し、3速を選ぶ。ゲートの形状は複雑だが、すぐに慣れる。
サスペンションは洗練され、路面の不整へ神経質になる必要はない。反面、スプリングは柔らかいから、ボディロールは想像より大きい。カーブの手前では、ちゃんと減速した方が望ましい。安全性へ配慮され、ブレーキは頼もしく効く。
気が付くと、国道A171号線へ。退屈な区間ではないが、それまでと比べるとトーンは落ちる。この付近では唯一の、南北を結ぶ幹線道路でもあり、時間帯次第では大型トラックやキャンピングカーも少なくない。
もっとも、スコットランド地方のドライブルート、ノースコースト500でも同様。1本西側の裏道を選ぶと、より自由に走れる。
運転へ没頭するには早起きが間違いない
筆者が選んだルートYCのもう1つの区間、スカボローのエリアへ入る。商店街にゴルフコース、遊園地の乗り物などが点在し、岬を挟んだ長いビーチが多くの人を集める観光地だ。静かで優雅な夏休みを過ごしたいなら、ウィットビーの方が向いている。
町の中心部、にぎやかな浜辺の通りが公式ルートの出発点。19世紀末、ビクトリア朝時代の建物が、ここにも壮観なほど残っている。筆者が泊まるホテルは、最近リノベーションされたバイク&ブーツ。立派なグランド・ホテルの、裏側にあった。

マックス・エドレストン(Max Edleston)
高台に立つスカボロー城は、2日目の最後を締めくくるのに最適。北海を金色に輝かせる、夕日へ見惚れる。この美しさを知ると、人気の景勝地の1つとして数えられることへ、納得せずにいられない。
グレートブリテン島の中東部に提唱されるルートYCでも、運転へ没頭するには早起きが間違いない。多くの観光客が朝食をとっている頃、丘陵地帯をうねる道を飛ばす。スマートフォン右上のアンテナは、辛うじて1本が光っている。
夢中になっている内に、通行料が10ポンド(約1950円)とお安くない有料道路、ダルビー・フォレスト・ドライブの入口へ到着していた。サイクリストが楽しめる場所だが、ドライバーも同様だ。
ゲートを通過すると、針葉樹林に取り囲まれる。制限速度は時速30マイル(約48km/h)と低めだが、道幅が狭く、それ以上飛ばしたいとは思えないだろう。写真撮影で何度か420SLを停め、2日前に出発したソーントン・デールの村へ戻った。