Sクラス譲りのV8エンジン&リアサス メルセデス・ベンツ420SL ヨークシャーを巡る(1)

公開 : 2025.04.06 17:45

ヨークシャー地方で提唱される新たなドライブルート「YC」 最後まで先進性が保たれたR107型SL 日常から遠くない場所の、運転を楽しめる非日常 英編集部が3日間で魅力を探る

ヨークシャー地方で提唱される新ドライブルート

時間を争うように人々が活動するこの世界で、理想のロードトリップを謳歌するには、人里離れた場所へ向かう必要がある。殆どのドライバーにとって、それは年に数回叶えられるかどうか、といった類のものだろう。

さほど広くないグレートブリテン島でも、北部のスコットランド・ハイランド地方まで足を伸ばすのは、簡単なことではない。欧州大陸でも、アルプス山脈へ頻繁に近づけるのは、限られた地域へ住む人だけだ。

メルセデス・ベンツ420SL(R107/1971〜1989年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ420SL(R107/1971〜1989年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

しかし、スコットランドにノースコースト500という素晴らしいドライブルートを提唱したトム・キャンベル氏は、近場にも魅力的な道があることへ気が付いた。ロンドンから北へ約350km離れたヨークシャー地方に、新たな喜びを提案をしている。

その道は「ルートYC」と名付けられた。AUTOCAR英国編集部のオフィスからでも、5時間かからない。

そこを折角走るなら、スポーティなクラシックカーが良い。だが、ハードなサスペンションで、落ち着きに欠けるのは望ましくない。途中で故障し、ロードサービスのお世話になるのもうれしくない。

あまたの中で筆者が選んだのは、R107型のメルセデス・ベンツSL。通称パゴダルーフの後継だ。ルートYCの中心に位置する、グレートブリテン島中東部のウェスト・ナプトンには、偶然にもクラシック&スポーツカー・センターがあり、お借りすることが叶った。

最後まで先進性が保たれたR107型SL

R107型のSLは、1971年に発売。W116型のメルセデス・ベンツSクラス譲りとなる、トレーリングアーム式リア・サスペンションと、V型8気筒エンジンを搭載していた。1980年には、新型W126型Sクラス用のエンジンを獲得している。

1986年に最後のアップデートを受け、スタイリングへ手が加えられ、V8エンジンの設定が改められ、420SLが追加されている。生産は長く続いたが、最後まで先進性は保たれていた。連れ出したレッドのコンバーチブルは、1986年式だ。

メルセデス・ベンツ420SL(R107/1971〜1989年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ420SL(R107/1971〜1989年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ルートYCは、自然公園をぐるっと巡るような、環状の道ではない。遠く離れた地点を目指すわけでもない。1日で走りきれるような、6つのループ区間が組み合わされている。今回筆者は、そのうちの2つの区間を辿ってみることにした。

1つは、東沿岸のウィットビーという町の外周を巡るコース。もう1つは、その南のスカボローを取り囲むコースだ。

初日は、ソーントン・デールという小さな村からスタート。農作地帯が、見渡す限り続いている。国道A169号線は、ノース・ヨーク・ムーアズ国立公園へ伸びている。

勾配が徐々に増し、180度向きを変えるヘアピンカーブへ出くわす。アメリカのサーキット、ラグナセカのコークスクリュー・コーナーに匹敵するような、激しい登り坂を一気に旋回。さっきまで整然としていた大地は、荒野へ転じる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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