クルマ業界の「変革請負人」 リビアンとR1Tで垣間見る未来(2) トラックと思えないワープ感

公開 : 2025.04.12 09:46

スタートアップの処女作とは思えない熟成

砂漠が広がるネバダ州といえども、冬の山間部は寒い。バッテリーEVには理想的な条件とはいい難く、駆動用バッテリーは予想以上に減っていく。

効率を改めるべく、回生ブレーキとドライブモードの違いを試してみる。R1Tの車重を最大限に活用できそうなモードを選ぶと、遥かにエネルギー効率は良くなった。

リビアンR1T トリ(北米仕様)
リビアンR1T トリ(北米仕様)    撮影:ジェイミー・リプマ(Jamie Lipma)

サービスセンターへ戻った時の平均電費は、3.2km/kWh。感心するほどではないが、大きさと重さを考えれば、褒められるだろう。

R1Tの完成度は、唸らされるほど高い。とても、スタートアップ企業の処女作だとは思えない。電動パワートレインも運転体験も、熟成されている。同僚のマーク・ティショーは、サイバートラックを試乗して気に入っていたが、筆者はR1Tを気に入った。

「お客様の期待は、望むもので変化します。電動パワートレインを搭載した、従来的なクルマを求める人は多くありません。相互接続されたような、異なるタイプの製品をご希望なのです。それが、従来の自動車メーカーのモデルとの大きな違いでしょう」

自動車業界における「変革請負人」

フォルクスワーゲン・グループがリビアンとの協業を決めた理由も、そこにある。既存のメーカーは、ソフトウエアで性能が左右される「ソフトウエア・ディファインド・ビークル」技術の構築へ巨額を投じつつ、苦戦中。他社との協業が最前な場合もある。

ベンサイドが認める。「(投資は)これまでの成果に対する、素晴らしい評価です。両社は、互いに補完できる強みを保持しています。弊社では、白紙状態から構築できるソフトウエアと電動アーキテクチャ、インパクトを与えたいと願う情熱的なチームです」

リビアンR1T トリ(北米仕様)
リビアンR1T トリ(北米仕様)    撮影:ジェイミー・リプマ(Jamie Lipma)

「対して、フォルクスワーゲン・グループは経験と規模、幅広いブランド・ポートフォリオをお持ちです。それは、弊社の技術者が更に大きなインパクトを与える、素晴らしい機会へ繋がります」

合弁会社の詳細は、まだ調整段階にある。それでも、リビアンの技術を基礎としたソフトウエア・プラットフォームで、新たなクルマが作られることは間違いない。その最初のモデルは、2027年に発売予定のID.エブリー1の量産版になるだろう。

「フォルクスワーゲン・グループの経営陣は、弊社と同等に機敏に動く社風を維持し、野心的な精神をグループ内へ与える変革の要素として、合弁事業を活用する意志を示してくださいました。これは、弊社にとって非常に重要なことでした」

テスラとリビアンのアプローチは、対照的かもしれない。しかし、流動的な自動車業界の「変革請負人」として機能し得る点で、その核心部分は似ているようだ。

撮影:ジェイミー・リプマ(Jamie Lipma)

リビアンR1T トリ(北米仕様)のスペック

北米価格:10万2400ドル(約1536万円)
全長:5514mm
全幅:2078mm
全高:1923mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:2.9秒
航続距離:597km
電費:−km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:3182kg
パワートレイン:トリプル永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:141.5kWh
急速充電能力:−kW
最高出力:850ps
最大トルク:152.2kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

リビアンR1T トリ(北米仕様)
リビアンR1T トリ(北米仕様)    撮影:ジェイミー・リプマ(Jamie Lipma)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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