クルマ業界の「変革請負人」 リビアンとR1Tで垣間見る未来(2) トラックと思えないワープ感

公開 : 2025.04.12 09:46

北米初のEVフルサイズ・ピックアップ 3モーターで850ps 無線アプデで乗り心地が変わる ソフト中心の開発を進める「変革請負人」 クルマ業界の未来をリビアンとR1Tで英編集部が垣間見る

テスラより温かみのある車内の雰囲気

リビアンR1Tの車内の雰囲気は、テスラより温かみがある。アッシュウッド調のダッシュボード・トリムと格子柄のカーペットは、どこかクラシカル。1970年代の、高級ホテル風ともいえる。不透明度を調整できるガラスルーフから、陽光が降り注ぎ明るい。

後席側は、背もたれが置き気味だが、空間自体は広い。エアコンとインフォテインメント用の、タッチモニターが独立して用意されている。

リビアンR1T トリ(北米仕様)
リビアンR1T トリ(北米仕様)    撮影:ジェイミー・リプマ(Jamie Lipma)

車載機能の殆どは、例によってタッチモニターで操作する。ステアリングホイールの角度調整をトグルスイッチで行うにも、ドライブモードを選ぶにも、タッチモニターをタップすることになる。

システム自体は洗練度が高い。コミック風のグラフィックは新しい。アップル・カープレイとアンドロイド・オートには非対応だが、使いやすいから、基本的には困らない。

オフロード・モードのページを開くと、驚くほど多様な走行データを確認できる。停車中のギアガード・セキュリティ・モードを選ぶと、車内の私物を見守るような、クマのイラストが描かれる。

「タッチモニターの表示には、細心の注意を払っています。そのデメリットも理解していますし、直感的な体験にしたいとも考えています。ドライバーへ楽しんでいただくべく、1ピクセル毎に議論するほどです」。リビアンの、ワシム・ベンサイド氏が話す。

3.2tを蹴散らす トラックとは思えないワープ感

R1Tと1日を過ごすとしたら、どこへ向かうべきだろう。リビアンのサービスセンターからは、ラスベガスに立ち並ぶビルのスカイラインが見える。だが、R1Tのホームタウンだとは感じにくい。少し派手すぎる。サイバートラックの方が似合いそうだ。

柔らかくクラシカルな雰囲気は、アウトドア的。ネバダ州の北西部に広がる、スプリングマウンテンへ走ることにした。小さな市街地を抜け、広々としたハイウェイへ。乗り心地の良さに感心する。

リビアンR1T トリ(北米仕様)
リビアンR1T トリ(北米仕様)    撮影:ジェイミー・リプマ(Jamie Lipma)

荒涼とした大地へ伸びる車線は広く、フルサイズ・ピックアップでも大きさは気にならない。全長は5514mm、全幅が2078mm、全高が1923mmあり、ホイールは22インチ。極めて安定しているといはいえないが、エアサスは衝撃を見事になだめる。

案の定、抜群に速い。3基の電気モーターが、3.2tを蹴散らす。しばらく走って、彼方まで続く直線を見つけた。周囲にクルマがいないことを確認して、ローンチコントロールを試してみる。ピックアップトラックとは思えない、ワープ感を体験するのは面白い。

とはいえ、R1Tの真骨頂は路面を問わない走行性能と、たくましい牽引能力。ラスベガスの谷を抜けると、ワインディングが始まる。興奮を誘う程ではないが、R1Tはヘアピンカーブを怯むことなく克服していく。連続するカーブでも、非常に速い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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