【1970年代にファンが熱狂】幕張メッセに『6輪タイレル』降臨!タミヤとF1名門チームの親密な関係

公開 : 2025.04.19 08:05

さる4月11~13日にかけ千葉の幕張メッセにおいて、恒例の『オートモビルカウンシル』が開催されました。本稿では会場内の一角で異彩を放っていたタミヤ・ブースに展示された、『6輪タイレル』の話題を長尾循が掘り下げます。

実車をスケールモデルとともに展示

さる4月11~13日にかけ千葉の幕張メッセにおいて、恒例の『オートモビルカウンシル』が開催された。本稿では会場内の一角で異彩を放っていたタミヤ・ブースに展示された、『6輪タイレル』の話題を掘り下げてみたい。

ホビーショーなどの模型イベント以外に、サーキットや実車系イベントにも積極的に参加、模型、ホビー文化を広く知らしめることに貢献しているタミヤ。今回のオートモビルカウンシルでは自社が所蔵する『ティレルP34』、いわゆる6輪タイレルの実車を、そのスケールモデルとともに展示した。

オートモビルカウンシル2025のタミヤ・ブースに『6輪タイレル』が展示。
オートモビルカウンシル2025のタミヤ・ブースに『6輪タイレル』が展示。    中島仁菜

熱心なファンにとっては、静岡のタミヤ本社にあるタミヤ歴史館/ショールームに静態保存されている6輪タイレルは古くからお馴染みの存在だろうが、その現車がこのような社外のイベントに展示されることは稀だ。

しかし、今回は同社からリリースされた1/20グランプリコレクションシリーズ、1/12ビッグスケールシリーズ、そして1/10のラジコンという6輪タイレルの各モデルを販売するのに合わせ、そのアイコンとしてディスプレイされたというわけだ。

F1としては史上唯一の6輪車

1975年秋、来シーズン用新型F1マシンの発表会で初めて人々の前に姿を現し、1976、1977年の2シーズンにわたって活躍した6輪タイレルは、実戦に投入されたF1としては史上唯一の6輪車として知られる。しかも、ワンツーフィニッシュを含む活躍で、2シーズンにわたってトップコンデンターとして走り続けたのだ。

この唯一無二のF1マシンは模型の世界でもスーパースター級の存在となり、世界中の模型メーカーがこぞってミニカーやプラモデル、ラジコンで製品化した。もちろんタミヤも実車の現役当時に、1/20と1/12のプラモデルで1976年シーズンの前期型を、そして1/10のラジコンで1977年シーズンを走ったフルカウルの後期型を相次いでモデル化した。

1976~1977年シーズンに活躍した、F1史上唯一の6輪マシンとして知られる。
1976~1977年シーズンに活躍した、F1史上唯一の6輪マシンとして知られる。    平井大介

ただ、当時はレース毎に微妙に進化する実車の取材と模型発売タイミングとの兼ね合いで、厳密にはどのレースに参戦したマシンかは特定せずにモデル化されたのだが、近年リニューアルされた1/20の製品では『タイレルP34 1976日本GP』、『タイレルP34 1977モナコGP』と、正確な考証が反映された改訂版となっている。

ブースに展示されたタイレルP34

昨今では『Tyrrell』のカタカナ表記は『ティレル』とするのが一般的だが、P34デビュー当時の日本では『タイレル』の表記が一般的で、今なおこのマシンを『6輪タイレル』と呼ぶオールドファンも多い。

そんな時代に敬意を表してか、タミヤ製品もそのカタカナ表記が『タイレル』とされているのが、当時を知るファンとしては嬉しい。ちなみに1/20キットのパッケージに描かれているのは1976年日本GP仕様がゼッケン3のジョディ・シェクター車、1977年モナコGP仕様がゼッケン4のパトリック・デパイエのマシンだ。

オートモビルカウンシルの会場ではタミヤのプラモデルを販売。
オートモビルカウンシルの会場ではタミヤのプラモデルを販売。    平井大介

改めて、ブースに展示されたタイレルP34の実車について確認しよう。この個体は1978年にチーム・タイレルからタミヤにやってきたものだという。これは実車取材を通じて、タミヤとチーム・タイレルとの間に育まれた親密な関係ゆえ実現したものといえよう。

ただしこの個体自体は実戦を走ったものではなく、タイレルP34が現役を退いたシーズン終了後に予備のシャシーやパーツを組み合わせて組み上げられたものだ。確かにカラーリングは1976年のものだが、ディテールを見れば1977年の特徴も混在している。

ともあれ静岡に行かねばお目にかかれない本物の6輪タイレルを幕張メッセの会場で見ることができたことはまさに眼福。さらにはその精密なスケールモデルが今なお手に入る幸せ、なのである。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    長尾循

    Jun Nagao

    1962年生まれ。企画室ネコ時代を知る最後の世代としてモデル・カーズとカー・マガジンの編集に携わったのち定年退職。子供の頃からの夢「クルマと模型で遊んで暮らす人生」を目指し(既に実践中か?)今なおフリーランスとして仕事に追われる日々。1985年に買ったスーパーセブンにいまだに乗り続けている進歩のない人。
  • 撮影

    中島仁菜

    Nina Nakajima

    幅広いジャンルを手がける広告制作会社のカメラマンとして広告やメディアの世界で経験を積み、その後フリーランスとして独立。被写体やジャンルを限定することなく活動し、特にアパレルや自動車関係に対しては、常に自分らしい目線、テイストを心がけて撮影に臨む。近年は企業ウェブサイトの撮影ディレクションにも携わるなど、新しい世界へも挑戦中。そんな、クリエイティブな活動に奔走しながらにして、毎晩の晩酌と、YouTubeでのラッコ鑑賞は活力を維持するために欠かせない。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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