車内にタッチスクリーン、実は必要です 便利で安全なアイテム 英国記者の視点

公開 : 2025.05.29 18:45

以前、クルマにタッチスクリーンを搭載すると注意力散漫になり危険だし、単なる手抜きデザインだ……と指摘した記者がいました。しかし、もはや不可欠な装備であることは事実。AUTOCAR英国記者のコラムです。

よく設計すれば便利 自分の意見に反論してみる

少し前に、このAUTOCARのコラムで、デジタルスクリーンを搭載しないクルマの必要性を訴える意見が掲載された。「わたし達は1日中スクリーンを見続けている。スクリーンは注意をそらすもので、ただのデザインの手抜きにすぎない」と記者は主張していた。

その記者は、えーと……わたしだ。そこで、自分の意見に反対して自ら異議を唱え、この場を借りて事実を明らかにさせてほしい。

現行世代のミニに搭載されている円形タッチスクリーン
現行世代のミニに搭載されている円形タッチスクリーン

確かに、自動車メーカーはスクリーンに依存しすぎているし、わたしはシンプルなクルマの持つ禅のような魅力も楽しんでいる。しかし、主流のクルマの大部分にとって、タッチスクリーンは複雑な車載機能を使いこなすために不可欠であり、顧客が望むものでもある。

イネオス・グレナディア(注:英国のイネオスが生産する大型SUV)はそのことを如実に表している。グレナディアのインテリアは、まるで航空機の操縦室のように複雑だ。その操作方法を習得するには、何年もかけて勉強と訓練が必要だ。

わたしは、車内温度、シート、そして役に立たないけれど必須の運転支援機能など、頻繁に使用する機能は、物理的なボタンで操作するのが理想的だと固く信じている。

しかし、タイヤの空気圧のリセット、スピードメーターをマイル表示にするかキロメートル表示にするかの設定、オーディオのイコライザーなどはどうだろう? これらは一度設定したら、もう気にも留めないような機能なので、画面で操作するのが最適だ。

1980年代から1990年代にかけてよく搭載されていた、スライダー付きの単体の1DINイコライザーユニットを覚えているだろうか? あれはまさにスペースの無駄遣いだった。

タッチスクリーンを賢く実装すれば、ダッシュボードの限られたスペースをより有効に活用でき、ドライバーは周辺機器を視界に入れずに、さまざまな機能にすばやく簡単にアクセスできるようになる。

BMW定番の『iドライブ』ロータリーコントローラーは、メニューのスクロールやナビゲーションマップのズームイン/ズームアウトに便利で、レイアウトの整ったスクリーンとは理想的な組み合わせだ。ただ、住所を入力するのは非常に面倒だ。

タッチスクリーンの方が優れている。一部の人とは異なり、わたしは、走行中の車内でタッチスクリーンを使用することが本質的に危険なことだとは考えていない。確かに、中には危険なものもあるし、反応時間や信頼性に関する基準も設けるべきなのは明白だ。なぜなら、電源が落ちたり、反応が鈍かったりするタッチスクリーンを何度も押すことほど、注意をそらすものはないからだ。

しかし、ハードウェアの性能が追いつき、メニューが合理的にレイアウトされ、大きなアイコン、シンプルなグラフィック、そして重要な情報を常に表示する明確な優先順位付けが施されていれば、タッチスクリーンは素晴らしいものになり得る。

アップル・カープレイはゲームチェンジャーだった。音楽やポッドキャストを安全に操作できるからだ。また、新型のミニに搭載された平皿のようなタッチスクリーンは、欠点こそあるものの、歴史的なスタイリング要素をうまく再構築したものであり、同ブランドの延長線上にあるような印象を受ける。

タッチスクリーンは、インテリアデザイナーにとって一種の超能力のようなものだ。しかし、スパイダーマンが初期の頃、屋根から落ちたり、自分の力を悪用したくなったりしたように、自動車メーカーもバランスを見つける必要がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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