【現役デザイナーの眼:新型BMW iX3】小さくなったキドニーグリル!シンプルだか見えない方向性

公開 : 2025.09.11 11:45

デザインの統一性のなさは転換点か

どうも現在のBMWデザインは、ディレクションに2面性があるように思います。ひとつは新型『X3』や少量生産車であるクーペ『スカイトップ』のように、シンプルかつ大胆な造形をしているデザインです。

私は新型X3を見て、久しぶりに良いデザインのBMWだなと思いました。プロポーションに個性があり、また大胆な立体構成でBMWには珍しくリフレクションの変化を活用したサイドの立体だったり。丸い印象は好みが分かれるところではありますが、『意図が伝わる』デザインだと思います。

本文では触れなかったが、インテリアの方がシンプルかつ大胆な造形をしている。このノリでエクステリアをデザインしたらどうなったか?
本文では触れなかったが、インテリアの方がシンプルかつ大胆な造形をしている。このノリでエクステリアをデザインしたらどうなったか?    BMW

もうひとつは5シリーズや2シリーズなどのように、プロポーションよりディテールの大胆さや複雑さに目がいくデザインです。こちらは伝統的なBMWのデザインとは異なり、ディテールが目立つので意図を感じづらいんですね。今回のiX3はシンプルではありますが、私は後者の方だと思うんです。

理由は、全体のデザインにおいてやはり意図が見えづらいからです。逆スラントのフロントありきだとすれば、もっとそれを活かすデザインがある気がします。最近BMWではデザインディレクターの交代があったので2面性はその影響かもしれませんが、今後デザインの方向性はどのようになっていくのでしょうか。

個人的にBMWのEVで印象に残ったクルマは『i3』です。コンパクトでしかも背が高いパッケージにも関わらず、抜群のプロポーションと個性がありました。このクルマが発売されたのは2013年と、すでに12年経ってますが、今でも街中で見ると思わず目を追ってしまいます。

当時はデザインが奇抜だと言われていましたが、今見てもよく出来たデザインだと思うんですね。iX3が12年後どのように見えるのかが気になるところです。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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