約2万km走行でエンジン車よりもクリーンに BMW最新EV『iX3』 鍵を握るのはサステナブル素材

公開 : 2025.11.28 07:25

BMWの発表によると、新型EV『iX3』は約2万1500km走行した後、内燃機関車よりもCO2排出量が少なくなるとのこと。軽量化だけでなく、持続可能な再生原料の使用が『ノイエ・クラッセ』の鍵となります。

かつてのi3を彷彿とさせる先進性

9月のミュンヘン・モーターショーで初公開された航続距離805kmのBMW『iX3』は、同社がEVで培ってきたあらゆる知見を結集した新世代モデルの第一弾である。

自動車開発を根本から再考することを目指した「プロジェクトi」は2007年に発足した。数年にわたる予告を経て2013年に発売された『i3』は、期待通りあらゆる面で先進的だった。

BMW iX3
BMW iX3    BMW

当時、車両重量とバッテリーのエネルギー容量の比率は現在よりはるかに劣っていた。そこで、BMWはEVの実用性を高める唯一の方法として、キャビン全体(ライフモジュール)をカーボンファイバー製にすることで軽量化を図った。

同様の構造はそれまでスーパーカーにしか採用されておらず、非常に野心的な試みだった。その戦略が功を奏し、i3の車両重量は仕様によっては1300kgをわずかに超える程度に収まった。

iX3は文字通りi3の後継車ではないが、精神的にはそうと言えるかもしれない。新世代の基盤となるEV専用プラットフォーム『ノイエ・クラッセ』の導入により、以前のような派手さはなくなったが、洗練度は変わらない。

昨今、持続可能な素材への移行と、設計の細部に至る「循環性」の必要性が高まりつつある。これを受け、BMWは「セカンダリーファースト」と呼ばれるアプローチを採用した(同様のアプローチは他社にも見られる)。これは内装トリムから鋳造アルミ製サスペンション部品に至るまで、あらゆる部品の製造工程でバージン原料(未使用素材)よりも再生原料(リサイクル素材)を優先するというものだ。

したがって軽量化は依然として重要だが、原料と製造工程の持続可能性も同様に重視されるようになったのだ。

Gen6と呼ばれる第6世代バッテリーセルでは、使用されるコバルト、リチウム、ニッケルの50%が再生原料であり、第5世代セルと比較してCO2換算排出量を42%削減している。エンジンルームカバーに使用される再生原料の30%は、廃棄漁網やロープを再利用したものだ。

i3のボディシェルが画期的だったのは、カーボンファイバー製であるだけでなく、BMWとそのパートナーであるSGLカーボンファイバー・グループが、同構造の大量生産を実現したという点だ。2022年の生産終了までに、i3は25万台が販売された。

その後、業界ではウェル・トゥ・ホイール(油井から車輪まで)排出量への注目が非常に高まっている。BMWによれば、欧州のエネルギーミックスで充電した場合、『iX3 50 xドライブ』のCO2換算排出量はわずか1万3360マイル(約2万1500km)の走行で同等の内燃機関車を下回るという。再生可能エネルギー由来の電力のみを使用した場合、その距離は1万875マイル(約1万7500km)になるとされている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    役職:技術編集者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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