歴史のマイルストーン ベントレーMkVI(2) 穏やかなスタンダード・スチール・サルーン ホイールベースが生む個性の違い

公開 : 2026.09.20 17:50

戦後初となるベントレーの量産モデル、MkVIがクルーで作られて80年。UK編集部が過小評価される傑作を振り返ります。複数のホイールベースへ対応したシャシーに、視覚的な指標になったボディなどに注目です。

穏やかで控えめなスタンダード・スチール・サルーン

HJマリナー社のボディをまとう、シルバーのベントレーMkVIは、生産後期と多くの点で異なる事実が興味深い。初期の姿を理解する指標となり、試作車だったグリーンのシャシー番号3-B-50と並べれば、改良点も観察できる。

ショールームへの展示を前提に、装備は極めて充実している。荷室には、荷物の汚れを防ぐためのダストカバー。クロームメッキが飾るボンネットの先端には、象徴的なマスコット、フライングBがあしらわれている。

ベントレーMkVI HJマリナー・4ドア・スポーツサルーン(1946年式/英国仕様)
ベントレーMkVI HJマリナー・4ドア・スポーツサルーン(1946年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ブラックのMkVIは、1947年式のスタンダード・スチール・サルーン。シャシー番号はB119BGで、華やかなシルバーのHJマリナー社製ボディと比べると、穏やかで控えめ。内装はベージュのレザーで、インテリアも落ち着いている。

フロントシートにはツインアームレストが備わり、背もたれはプリーツ加工がない、シンプルな処理。初期の標準仕様の特徴をしっかり残す。

ヘッドライトが埋め込まれた美しい処理

スタンダード・スチール・サルーンのボディは、10インチ(約254mm)長いシャシーを持つ、3-B-50の進化形。だが構造は異なり、木製フレームにアルミ製パネルを貼るのではなく、プレスド・スチール社によるプレス加工のスチール製となる。

タイリングは、ロールス・ロイス会長だったアーサー・シドグリーブス氏が、実物大のモックアップ・モデルを確認して承認。ヘッドライトがフロントフェンダーに埋め込まれた、現代的で美しい処理が大きな特徴といえる。

ベントレーMkVI スタンダード・スチール・サルーン(1946〜1952年/英国仕様)
ベントレーMkVI スタンダード・スチール・サルーン(1946〜1952年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

実は、プレスド・スチール社のプレス用金型を作るには、25万ポンドが必要だった。それでも、1台あたりの製造コストは、パークウォード社が製作する特注ボディの半額で収まった。プレス加工での量産化を実現するため、徹夜作業も続いたそうだが。

ドアを閉めると、生産による違いを実感できる。木製フレームを持つコーチビルド・ボディは、ズシンという重厚な音を発するのに対し、プレス成形されたB119BGでは、カシンと軽い金属的な音が鳴る。

運転席へ座れば血縁の深さを感じ取れる

走りの違いを知るなら、1939年のプロトタイプと、1947年のプレスボディとの比較が望ましいだろう。それでも運転席へ座ると、血縁の深さを真っ先に感じる。直列6気筒のB60エンジンは低域からトルクが太く、市街地でも高速道路でも、至って扱いやすい。

2台とも、トップギアに入れたまま、25km/h程度からの加速は滑らか。100km/h以上での巡航も余裕。この能力を引き出すべく、メカに詳しいオーナーは自らオーバードライブを組み込み、大陸横断へ一層適したMkVIへ改造することもあった。

ベントレーMkVI スタンダード・スチール・サルーン(1946〜1952年/英国仕様)
ベントレーMkVI スタンダード・スチール・サルーン(1946〜1952年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

乗降時には、シフトレバーがズボンの裾へ引っ掛かりそうになるが、運転中の変速は極めて快適。2速からトップの4速まで、ギアの回転数を調整するシンクロが備わり、慌ててレバーを倒さなければ問題なし。減速時は、軽くアクセルペダルをあおると良い。

だが、乗り心地と操縦性に違いは現れる。どちらもステアリングにパワーアシストはなく、速度の上昇とともに軽く転じ、負荷が高まると手応えが増す特性は、一致するが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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