107年の歴史で「最も熟考された1台」 ベントレー・トルカル 膨大な時間をかけたV8サウンド ポルシェやアウディと技術共有 試作車の見事な第一印象

公開 : 2026.09.08 18:05

ベントレー初となるバッテリーEVの『トルカル』のデビューが間近に迫る中、AUTOCARのUK編集部は、世界初の同乗機会を得ました。特徴的なV8サウンドと、追求された乗り心地。プロトタイプの第一印象とは?

世界で初めて許された同乗

筆者が腰掛けると、リアドアが静かに閉まった。英国を代表するブランドの1つを率いるフランク・ワリザー氏は、107年に及ぶ歴史を振り返り、「最も熟考された1台」だと表現する。ベントレー・トルカルのことだ。

タイヤが転がり始める。特徴的なサウンドとともに。開発に関わる人を除いて、世界で初めて、AUTOCARは同社初のバッテリーEVへの同乗が許された。

ベントレー・トルカル(プロトタイプ)
ベントレー・トルカル(プロトタイプ)

プロポーションは、ベントレー・ベンテイガより短く低い。しかし、乗員空間の広さは同等が目指されている。膝前にも頭上にも、かなりの余裕がある。

内装は、メリノウール張りのシートにオンブレ・ベニア・ウッドトリムなど、過去にはないラグジュアリーな演出で仕立てられるという。プロトタイプだから、その殆どは入念にカモフラージュされていたが。

「キュレーション・エンジン」で制御される体験

リアシートから少し体を起こし、製品ディレクター、マーティン・ペイジ氏が運転する様子をうかがう。ダッシュボードを覆うカバーを少しめくりながら、デザインの経緯を彼が説明する。その口調から、伝統的な雰囲気を好む顧客が多かったことが滲む。

タッチモニターが回転して姿を表すような、仕掛けは見当たらない。レバーが突き出た、「オルガンストップ」スタイルのエアコン用物理スイッチもない。ダッシュボードの端から端まで、ドアパネルと続くように、間接照明が点っている。

ベントレー・トルカル(プロトタイプ)
ベントレー・トルカル(プロトタイプ)

その光は、メーター用モニターやタッチモニターと連動。ガラスのようなコントローラーで選ぶドライブモード、「キュレーション・エンジン」で制御される。

モードは、お約束のベントレーの他、コンフォート、スポーツ。新たに、リフレッシュも加わった。パワートレインにサスペンション、ステアリングの特性だけでなく、エアコンやマッサージ機能、間接照明、モニターのグラフィックなどが変化する。

ベントレーが追求してきた乗り心地を体現

中央のタッチモニターは台形で、僅かにカーブしている。上下にスワイプする際、自然に指が辿る軌跡へ合わせたという。ドライブモードを変えるたび、タッチモニター全面へカラフルなアニメーションが描かれる。

少し目障りかもしれないと話すと、「お望みなら、ピュアという設定があります。視覚的な演出をなくして、シンプルにモード変更できますよ」とペイジが答える。納得だ。

ベントレー・トルカル(プロトタイプ)
ベントレー・トルカル(プロトタイプ)

走るのは、アメリカ・カリフォルニア州のペブルビーチ。気付けばだいぶ進んでいたようだが、不快な揺れも音も、まったく感取されない。かといって、雲の上のよう、というわけでもない。しっかり路面を掴むような、優れたバランスの姿勢制御にある。

低速域では、22インチのホイールを通じて、僅かにロードノイズが届く。少し隆起したマンホールの蓋を通過すると、お尻へ優しい揺れが伝わる。あくまでも、安定した走行へ不可欠な範囲で。ベントレーが追求してきた、乗り心地にある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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