バブル絶頂の高速リムジン ベントレー・ターボR(1) 高性能ミュルザンヌが秘めた可能性 サブブランドからの脱却

公開 : 2026.03.07 17:45

高性能なミュルザンヌへ見出された可能性 コーナリングは目を見張る水準 テスタロッサへ迫った加速 1980年代の雰囲気に満ちた姿 ベントレー復調を導いたリムジンをUK編集部が紐解く

サブブランド脱却へ繋がった秘策のターボ

とびきりのアイデアを、通勤途中にひらめく時だってある。ベントレーの主任技術者、マイク・ダン氏は、グレートブリテン島東部に位置するエセックス州の道端で、市場へ大きなインパクトを与える手段を思いついた。

1980年代のベントレーは、ロールス・ロイスのサブブランドのようになっていた。フォルクスワーゲン傘下の今では、7000台の提供で利益の10%以上を稼ぎ出すことを踏まえれば、対照的な状態にあった。だが、それが存在感を一躍高める秘策になった。

左からベントレー・ターボRと、ベントレー・ターボRT LWB
左からベントレー・ターボRと、ベントレー・ターボRT LWB    マックス・エドレストン(Max Edleston)

フォードから1983年に移籍してきた彼は、最高出力と最大トルクを5割以上引き上げるべく、翌年にリムジンのミュルザンヌへギャレット社製ターボを搭載した。しかし、手つかずのサスペンションとタイヤは、それを受け止めきれなかった。

現実的な環境では、フォード・エスコートを追いかけることすら難しかった。操縦性の本格的な改良も必要だと気付いたダンは、小さくない予算を確保し、解決へ取り組んだ。

可能性が見出された高性能なミュルザンヌ

新たに設定された、そのハンドリング・オプションでは、サスペンションのダンパーとスプリングが強化され、アンチロールバーも大径化。ボディロールが大幅に抑えられていた。この反響は大きく、注文で最も指定されるオプションになった。

結果的に、速さと操縦性を両立した、本来のベントレーを取り戻すことに成功。取締役会は、ここへ新たな可能性を発見し、ターボRが誕生することになる。

ベントレー・ターボR(1985~1999年/英国仕様)
ベントレー・ターボR(1985~1999年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ターボRでは、改良が加えられたシャシーを標準化。リアサスペンションは再設計され、サブフレームを強化するパナールロッドが与えられた。ベースとなったベントレー・ミュルザンヌ比で、アンチロールバーは前が100%、後ろが60%も強化された。

タイヤはピレリP7で、バネ下重量を削れるロナール社製アルミホイールが履かされた。若者向けのホイールだと毛嫌いしていた、社内デザイナーのマーティン・ボーン氏だったが、ターボRのアイテムは洗練されたデザインだと認めている。

目を見張る水準にあったコーナリング

イタリア南東部、ナルドのテストコースでの試験を経て、334psのターボRはフロントスカートを獲得。高速走行時の抵抗を7%、揚力は15%減らすことに貢献した。0-100km/h加速6.7秒、最高速度217km/hのリムジンには、必要な装備だった。

コーナリングも、目を見張る水準にあった。ボディロールが大幅に抑えられ、加減速時のピッチングも抑制。メルセデス・ベンツ450 SEL 6.9に劣らず、優雅さを保ったまま、峠道を意欲的に走破することができた。

ベントレー・ターボR(1985~1999年/英国仕様)
ベントレー・ターボR(1985~1999年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

メーターパネルには、数10年ぶりにタコメーターが復活。ドライバーズ・サルーンであることを物語ったが、ロングホイールベースのターボRLには、どんな要人でも安楽に過ごせるであろう空間が設けられた。

それから40年余り。ターボチャージャーが生み出す巨大なトルクと、絶妙なサスペンションが生む快適性は健在だろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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