アルヴェルより足りない部分を補う走りの質感 新型『日産エルグランド』を渡辺敏史が吟味(後編) ドライバーに楽しさ、パッセンジャーに優しさを

公開 : 2026.09.07 10:05

15年ぶりにフルチェンを果たしたLLクラスミニバン、新型『日産エルグランド』を渡辺敏史が取材。第3世代eパワー+eフォースの緻密な駆動制御を中心とした走りの質感の高さで、『アルヴェル』に挑みます。

他のHEVシステムとは一線を画する美点

今回の新型『日産エルグランド』試乗は東名東名〜新東名の高速区間と御殿場、箱根周辺の一般道やワインディングと、短いながらもひと通りのシチュエーションを試すことが出来た。

運転する側にしてみれば、全域モーター駆動となるeパワーのドライブフィールはクルマをひときわ上質にみせてくれるわけで、その点はエルグランドも同じだ。発進から120km/hの巡航域に至るまでのひたすら滑らかな加減速の感触は、他のHEVシステムとは一線を画する美点といえるだろう。

新型『日産エルグランド』を、ひと通りのシチュエーションで試すことが出来た。
新型『日産エルグランド』を、ひと通りのシチュエーションで試すことが出来た。    山本佳吾

エンジン稼働時の音や振動も気づかないほど小さく押さえられているのは、eアクスルやインバーター等を一体化しひとつのケースーの中に封じ込めた5in1構造に加えて、エンジンノイズを実に60%軽減するというアクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)によるところが大きい。こちらはロードノイズも50%軽減するということで、車内の静粛性にも大きく貢献している。

と、ここまで強力なリダクションシステムとあらば乗員が圧迫感を覚えることもありそうだが、エルグランドの場合、試乗の始終でも全く違和感は抱かなかった。初めて車中にANCを採用したのはそれこそ日産のブルーバードだったと記憶するが、この間の技術的な進化に加えて、人間の側もノイキャンのある暮らしに慣れてきたという一面も影響しているのかもしれない。

ちなみにANCはオンオフの設定が可能なほか、運転席周辺や2列目シート周辺の消音を強化するゾーンコントロール機能も備えている。

タイヤが18インチの決め打ちになっている理由

新型エルグランドはeパワー+eフォースを筆頭に技術的にも満艦飾状態ゆえ、自重は2.4tを突破する。同じ四駆で比べればアルヴェルのエグゼクティブラウンジより約150kg重い計算だが、乗り心地とハンドリングのバランスもきっちり纏められていた。

全輪全域モーター駆動のeフォースは加減速時のピッチングのみならず、コーナリング時の姿勢保持も各輪の増減速で作り出すことが可能だ。そこに1/100秒単位でバネ下入力をスキャンしながら最適な減衰力を設定するIDSダンパーが連携することでその乗り味を支えている。

タイヤは235/60R18の1サイズで、取材車の銘柄は横浜ゴムのアドバンV6だった。
タイヤは235/60R18の1サイズで、取材車の銘柄は横浜ゴムのアドバンV6だった。    山本佳吾

制御のパラメータは当然膨大なものになるはずだが、試乗ではあらゆる場面でも自然に振舞い、機械的な介入を感じさせることはなかった。

グレード問わず、タイヤサイズが18インチの決め打ちになっている理由も、この統合制御の作動条件を統一して動的質感を担保する意味合いも大きいのだろう。ドレスアップはオーナーのオウンリスクながら、インチアップなどバネ下弄りは慎重に施した方がいいと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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